持続可能な資源活用を推進する英国のNGO、WRAPは、11月5日、英国の食料システムが抱える課題と可能性についてまとめた報告書、"Food Futures: from business as usual to business unusual"を公表した。今後10年間でリスクが想定される生産から販売、消費に至るまでの一連の食料システムにおける15のトピックを取り上げて、課題を解決するための新たなアプローチを提言し、産業界や政府による取り組みを促している。
人口増加や新興国の経済成長に伴う世界的な食糧需要の高まりを受けて、従来型の食料システムは持続可能性が期待できなくなっている。そこで、同報告書では現在の食料システムが抱えるリスクを特定した上で、将来それらの課題を解決しうるテクノロジーなどについて論じている。
同報告書で特定されているリスクや機会の一部は業界全体に影響するものだ。今後の課題としては、食料レジリエンスに対する気候変動リスク、食料廃棄の削減、食に関連する健康障害への対処など、環境・社会に深く関わる課題が提起されている。
一方で、これらの課題を解決しうる新たな機会として、サプライチェーンの協働やデジタル技術の早急な活用などが挙げられている。同報告書は、将来の食料システムを形作るトレンドとして、大量のデータを活用したテクノロジーや公衆衛生と環境サステナビリティのアジェンダ一元化を挙げている。
WRAPによると、次の10年間で農業は"Controlled Traffic Farming(CTF)"など精密なアグリテクノロジーの活用による変化が起きると予測されており、水、エネルギー、肥料を必要な箇所にだけ使用することによる土地の有効活用、生産の効率化、栄養素の増加、機械の削減に伴い最大75%のコスト節約等が可能となるという。
また、サプライチェーンにとってもデータテクノロジーを活用するメリットは大きく、生産工程や輸送時のインテリジェント温度制御、製品の高品質化とCO2削減、新鮮さの維持と製品寿命の延長などが実現できるとしている。
そして、同報告書では食料リスクを乗り越える上でテクノロジーだけでなく消費者の役割の重要性も強調しており、消費者が健康的で持続可能な食品に対する需要が変化を後押しするとしている。
最近では農業にビッグデータを活用する新たな取り組みなども進んでおり、テクノロジーの進化により農業のあり方は今後大きく変化することが予想される(参考記事:【アメリカ】ビッグデータ解析で農業のサステナビリティ向上に取り組むIBM)。一方で、WRAPの調査にあるように、我々一人一人が食に対して何を求め、どのようなライフスタイルを選択していくかという消費者からの働きかけも重要だ。食の安全性や原材料の透明性への要求、廃棄削減への協力など、消費者が購買行動を通じて発揮できる影響力も大きい。
人口増加や気候変動などにより世界的な食料リスクが顕在化する中、生産から消費にいたるまで食料システムに関わる全ての人に行動が求められている。
【レポートダウンロード】Food Futures: from business as usual to business unusual
【参照リリース】A healthier diet is needed for the planet and consumers
【団体サイト】WRAP
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