米国では、再生可能エネルギー発電を推進する政府の方針強化、石炭価格の落ち込み、より安価で環境負荷も少ない天然ガスへのシフトなどに伴い、石炭会社の破たんが相次いでいる。米石炭大手のアーチ・コール(以下、アーチ)は1月11日、会社更生手続きを申請した。19億米ドルの第一抵当権のもと、自社債務を大幅に圧縮して再構築を進めることで債権者の過半数と合意に至った。
この合意に伴い、債権者はアーチの再建支援に向けて45億米ドル以上のバランスシート上の債務を免除し、長期的な立て直しに向けた体制をとる。この財務再編に対応するため、アーチおよび全ての100%国内子会社は同日、米国連邦破産法第11条に基づく会社更生手続きの適用をミズーリ州セントルイスの裁判所に申請した。アーチは再編に向けて取り組む一方で、現行の石炭採掘業務および出荷は引き続き継続する予定だ。
同社は1月11日時点で6億米ドル以上の現金と短期有価証券を保有しており、現状の業務遂行に十分な流動性を維持しているとのことだ。今後は同社側と監督委員を含む債権者側が参加する会議において破産法第11章の申請について協議し、裁判所に再建計画案を提出する。申請が認可されれば、2億7500万米ドルのDIP(debtor-in-possession:法的整理下にある企業向け短期融資)を受け取ることになっている。
なお、同社が保有する2億米ドルの売掛金については証券取引業者が現行条件下で継続して取り扱う予定とのことで、裁判所の認可により得られる融資や現行事業が生み出すキャッシュフローなどと合わせて、事業再編期間中の資金として活用される。従業員への賃金支払いや福利厚生も従来通り継続し、会社更生の申請中およびその後もサプライヤーやベンダーに対する支払いも通常通り行う予定だ。
アーチの会長兼CEOを務めるJohn W. Eaves氏は「今日の発表は当社の長期的な成功に向けた重要な一歩だ。我々が持つ選択肢を注意深く評価した上で、債権者との合意内容を裁判所の監督下によるプロセスを踏んで進めるのが、財政状態を堅固にし、バランスシートを強化する上で最良の方法だと決定した。我々はこの包括的な財務再編が大規模かつ低コスト事業者としてアーチの地位をさらに強化することに自信をもっている」と語った。
米国の石炭業界では2015年、石炭大手のウォルター・エナジーとペイトリオット・コールが破産裁判所の保護下に入り、8月には石炭大手のアルファ・ナチュラル・リソーシズも破産法第11条を申請している。また、2014年には探鉱事業を展開するエナジー・フューチャー・ホールディングスも更生手続き適用を申請しているなど、ここ数年で石炭関連の破たんが相次いでいる。
既に世界中で石炭をはじめとする化石燃料企業からの投資引揚げが本格化している中、これらの倒産のニュースはある意味必然の流れとも言える。石炭に関わる企業はこうした状況下においてどのように経営方針転換の舵を切るのか、厳しい選択が迫られている。
【参照リリース】Arch Coal Reaches Agreement with Senior Lenders to Restructure Balance Sheet and Reduce Debt
【企業サイト】Arch Coal
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