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【アメリカ】環境保護庁、シェールガス・シェールオイルのメタンガス規制発表

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 米環境保護庁(EPA)は5月12日、石油・ガス産業におけるメタンガス、VOC(揮発性有機化合物)、有害大気汚染物質の排出基準を厳しくする新規制を発表した。メタンガスの排出規制強化に関しては、今年3月の米加首脳会談で合意に達しており、米環境保護庁も規制強化の指針を発表していた。今回具体的な強化基準が発表されたことで、オバマ政権の気候変動目標に向けさらに一歩踏み出したこととなる。

 温室効果ガスの中でもメタンガスが与える影響は悪く、地球温暖化への影響は二酸化炭素の25倍と言われている。メタンガスは米国で発生する温室効果ガスの中で二酸化炭素に次ぎ二番目に多く、そのうち3分の1はオイルや天然ガス生産から発生している。とりわけシェールガスやシェールオイルなど新分野での資源採掘時に副次的に発生するメタンガスは、既存の規制で対応できておらず、メタンガス大量発生の温床となっていた。今回強化された基準では、2012年に制定された現行法では規制の対象となっていなかった水圧破砕技術をメタンガス規制の対象とするとともに、同様に規制が免除されていた小規模油田・ガス田も対象に加えた。また、ガス圧縮施設でのガス漏洩監視報告頻度を従来の2倍に増やした。規制対象は新設および増改築設備が主な対象だが、既存設備に対する情報報告義務制度(Information Collection Request:ICR)も制定する考えで、現在パブリックコメントを受け付けている。

 米政府は今回の規制強化により、2025年には、メタンガスを51万ショートトン削減、オゾン生成揮発性有機化合物を25万ショートトン、有害大気汚染物質を3,900ショートトン削減できると見込んでいる。51万ショートトンのメタンガス削減は、二酸化炭素削減1,100万トンに相当する。また、経済効果としても、6億9000万米ドル相当の環境便益があり、がんや呼吸器系疾患の減少にも繋がるという。米国政府は2025年までに2012年比でメタンガス排出量を40%から45%削減する目標を掲げており、今回の規制強化が実現に向けての一端を担う。現行設備に課される予定の情報報告義務制度(ICR)に関しては、今年中に油田・ガス田オーナーに対してサーベイを実施し、制度の詳細を固める。また、法定報告義務以外にも第三者が追加情報の開示を要請できる制度も検討している。

 世界的に化石燃料からの脱却機運が高まる中、米国政府はシェールガスやシェールオイルを新たな産業と位置づけており、潮流から逆行する動きを見せてきた。とりわけシェールガスやシェールオイルは、化石燃料としての環境負荷をもたらすだけでなく、採掘時に副次的なメタンガスや他の有害物質を生成するという深刻な環境被害をもたらしてきた。米国政府は、産業育成・エネルギー自給率の向上と気候変動対策というジレンマに陥っているが、今回の発表ではシェールガス・シェールオイルという産業育成は維持したまま、副次的な環境被害に関して歯止めをかけるという取り組みだ。一定の評価はできるが、シェールガス・シェールオイルの発展そのものの動向については、オバマ後の次期政権に持ち越される。

【参照ページ】EPA Releases First-Ever Standards to Cut Methane Emissions from the Oil and Gas Sector

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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