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【フランス】政府、イスラエル「入植地」の原産地表示を指示。EUガイドラインの初の実施国

palestine

 フランス政府は11月24日、昨年11月に欧州委員会が公表したガイドラインに従い、パレスチナにおけるイスラエル入植地(占領地)を原産地とする製品に「入植地産」と表示することを企業に求める見解を発表した。発表はフランス政府のホームページ上で「通知書(advisory notice)」という形でなされており、これが法的義務を持つものなのか、推奨レベルのものなのかははっきり伝えられていない。そのため、現地でも受け止め方に困惑する声が上がっている。

 この「入植地産」表示については、イスラエル政府によるパレスチナ地域の占領を国際社会として非難すべきという考え方から生まれている。原産地表示などは食品や貿易品など企業にとっては日常的に関係してくるテーマであるため、イスラエルが占領している入植地を原産地とする食品や工業製品の表記についてEUとしての指針作成がかねてから求められていた。欧州委員会はついに昨年11月11日、「Interpretative Notice(解釈通知書)」という文書を発表し、EU加盟国内で販売されるイスラエル入植地産の製品については、「イスラエル産」や、現地地域名である「ゴラン高原産」「ヨルダン川西岸産」などではなく、「イスラエル入植地産(Made in Israeli Settelement)」と記載することが推奨されると伝えた。このガイドラインの発表にはEUとしての苦悩も伺える。EUとしての見解をまとめることを求める声はEU加盟国から欧州委員会に2012年に上っていたが、米国やイスラエル政府からの反発もあり、今回の制定までに3年を要している。さらに、欧州委員会の発表でも、「この発表は法令ではない」と言及。あくまで推奨レベルだとするに留めた。当時日本では「EUが入植地表示を義務化した」と報じたところもあったが、義務化はしていない。

 今回フランス政府が発表したのは、この昨年のEU発表に準じた内容。昨年11月の欧州委員会によるガイドライン発表以降、ガイドラインに準じた政府方針を発表した国は今回のフランスが初。対象となるのは(東エルサレムを含む)ヨルダン川西岸と1967年の第3次中東戦争でイスラエルがシリアからはく奪したゴラン高原で生産されたもので、果実、野菜、ワイン、はちみつ、オリーブオイル、卵、家禽の肉、有機栽培による作物、化粧品等。

 英インディペンド紙は、欧州の外交問題シンクタンクEuropean Council on Foreign Relations(ECFR)のHugh Lovattイスラエル問題担当者の見解を伝えており、同氏によると「今回の措置に踏み切った背景には、2014年初頭以降進展がなかったイスラエルとパレスチナ関の和平会議をパリで開催するという提案を、イスラエルが「2国間で協議すべき問題」として応じなかった事に加え、入植地を拡大し続けていることへの反発がある」としている。また「EU加盟国間は同調傾向があり、今回のフランスの対応が他国にも波及する可能性がある」という。フランス政府の発表に対し、イスラエル外務省は即反応、非難声明を出している。イスラエルにとってEU圏は同国最大の輸出相手でもあるが、今回の表示規定の対象品目はその1%にも満たない。しかし、政治的な背景がビジネスに波及する事態となったことから、大きな注目を集めている。

 欧州内では、欧州委員会ガイドラインの発表前から、英国が2009年、オランダとデンマークが2013年、ベルギーが2014年に、独自のガイドラインを発行。貿易、卸売、小売業者等に対し「入植地産」表示を要求している。例えば英国は、環境・食糧・農村地域省がホームページ上で、入植地産の商品へのラベル貼付義務化の政治的背景や実際のラベル表示について詳細な説明を掲載している。そこでの説明は、イスラエルとEU間には連合協定が結ばれており特恵関税の措置が取られているが、2005年1月以降は入植地からEU向けに輸出されたものはその対象としないことが規定されたため、イスラエルからEUへの輸出品には国名と地名を併記することが義務づけられている、というもの。さらに、消費者に対して原産地の情報を省略することは、著しい誤解を招くと説明されている。

【参考ページ】France becomes first European country to label items from Israeli settlements
【欧州委員会ガイドライン】Interpretative Notice on indication of origin of goods from the territories occupied by Israel since June 1967
【英国ガイドライン】Department for Environment, Food and Rural Affairs:Technical advice: labelling of produce grown in the Occupied Palestinian Territories

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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