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【フランス】政府、同国初のグリーンボンド国債を70億ユーロ発行。発行額世界最大

 フランス政府は1月24日、同国初となるグリーンボンド国債を70億ユーロ(約8,500億円)発行した。グリーンボンドとは、調達資金の使途を環境目的に限定する債券。グリーンボンドはこれまで、国際機関や企業による「国際機関債」「社債」の発行があったが、グリーンボンド型の国債は非常に新しい。世界初のグリーンボンド国債は、2016年12月にポーランド政府が7.5億ユーロ(約910億円)発行したもの。今回のフランス政府のグリーンボンド国債発行は、世界で2番目、先進国として初。発行額は、国債以外も含めたグリーンボンドとして過去最大となる。

 フランスは、2015年12月の気候変動枠組条約パリ会議の主催国で。オランド大統領は気候変動への対応に高い政策優先順位を置いてきている。オランダ政権は、2017年政府予算案にグリーンボンド国債の発行を含めることを2016年9月に閣議決定。同12月にはグリーンボンド国債発行を含む政府資金調達プログラムが承認されていた。

 今回フランスが発行したグリーンボンド国債は、償還日は2039年6月の22年債。利回りは1.75%。通常のフランス国債も最近1.75%前後を付けており、ほぼ同等となった。グローバル・コーディネーター(売出業務全体を統括する証券会社)を務めたのは仏銀行大手クレディ・アグリコル。共同主幹事を担ったのは、クレディ・アグリコルの他、仏銀行大手のBNPパリバ、ソシエテ・ジェネラル、ナティクシス、英大手バークレイズ、米大手モルガン・スタンレー。グリーンボンド発行に伴うセカンド・オピニオンは、VigeoEIRISが務め、適格性に関する最高評価である「合理的(Reasonable)」が与えられた。 

 仏グリーンボンド国債の使途となる政府予算はすでに特定されている。

  • グリーン・ビルディング(32%)
  • 農水産業・生物多様性(22%)
  • 交通(19%)
  • エネルギー(13%)
  • 気候変動適応(7%)
  • 汚染抑止・廃棄物削減・リサイクル(2%)

 使途を歳出方法から分類すると、事業経費が33%、税控除が33%、市場介入が27%、投資が7%。また環境目的の観点で分類すると、気候変動緩和が59%、気候変動適応が21%、生物多様性が14%、汚染対策が6%となる。プロジェクトには、住宅の省エネ向上対策費など環境政策として定番のものから、気候変動観測用の衛星の打ち上げ、太陽光発電パネルを道路に敷設するための研究など非常に多岐に渡る。

 フランス政府は、調達した資金を2016年度や2017年度の政府事業に優先的に分配していくが、来年度以降の長期にわたる支出の財源にもしていくため、既存の「未来のための投資プログラム(PIA)」のスキームを活用する。PIAは、フランス経済の長期的な潜在成長力の改善を目的とし、高等教育、研究、産業・中小企業、持続的な発展、ITの5つの優先分野に対する長期的な政府基金。グリーンボンド国債の調達資金のうち短期に支出されないものは、PIA基金に一旦移し、長期支出の財源とする。また、グリーンボンド資金の使途や実効性を評価するための「グリーンボンド評価会議」を政府内に設立し、3年任期の6人から8人の委員が毎年、支出状況とKPIに基づくインパクト評価を行っていく。

 グリーンボンド国債の売出額は、当初は25億ユーロから50億ユーロ規模の発行を予定したが、需要申告(投資家からの購入需要の総額)が230億ユーロ(約2.8兆円)と投資家からの関心が非常に高かったことから70億ユーロに増額された。それでも、発行額に対して3倍以上の需要が集まったことになる。投資家需要の内訳は、運用会社33%、銀行21%、年金基金20%、保険会社19%、公的機関4%、ヘッジファンド3%。投資家の国別内訳は、フランス37%、オランダ19%、英国18%、北欧諸国7%、ドイツ7%、イタリア4%、欧州その他3%、アジア・中東3%、北米・中南米2%。投資意思を示した投資家リストには、フランス公的年金基金のERAFPや保険大手AXA、オランダ公的年金基金PFZWの傘下投資顧問会社PGGM、英国保険大手AVIVAの運用会社Aviva Investors、米運用会社大手ブラックロックやJPモルガン・アセット・マネジメントなど、欧米を代表する機関投資家が多数いる。NGOであるWWF(世界自然保護基金)フランス支部の名前もあった。また、日本企業では、日本生命、三井住友信託銀行もリストの中にあった。

 一方、2016年12月にポーランド政府が発行した世界初のグリーンボンド国債は、償還日2021年の5年債。グローバル・コーディネーターはHSBC。JPモルガンとポーランド最大銀行のPKO BPが共同主幹事。セカンドオピニオンはSustanaliyticsが務めた。

【参照ページ】Launch of the green OAT 1.75% 25 June 2039
【参照ページ】Creation of the Green OAT 
【参照ページ】French State funding for 2017 and situation in 2016
【グリーンボンド国債概要】Green OAT
【セカンドオピニオン】SECOND PARTY OPINION1 ON THE SUSTAINABILITY OF THE FRENCH REPUBLIC’S GREEN OAT

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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