自然資本分野における国際基準策定の自然資本連合(NCC)は3月22日、2016年7月13日に発行した初版「自然資本プロトコル(NCP)」の策定にあたり2015年10月から2016年2月まで実施された「パイロットプログラム」で、「Deep Dive Pilots」に参加した製薬世界大手ロシュのプログラム実施内容を公表した。このロシュのパイロットプログラムは、自然・社会資本インパクトコンサルティングSustain Valueが支援した。
【参考】「自然資本プロトコルは有用」パイロットプログラム参加企業が報告(2016年8月9日)
ロシュが実施した自然資本アセスメント(NCA)では、ロシュが本社を置くスイス国内の6拠点のみを対象とした。また、自社事業活動のみを対象とし、サプライチェーンは対象外とした。アセスメントでは、潜在的な重要性の高い自然資本関連テーマについて、定量分析、定性分析を行い、またインパクトの金額換算も行った。インパクト測定では、自社およびステークホルダーに及ぼす関連コストや便益を対象とした。ロシュはNCA結果とその後進捗状況を2015年と2016年のアニュアルレポートの中でも報告している。
また、潜在的な重要性の高い自然資本に対し企業全体のバリューチェーンがもたらすインパクトや依存度についても評価、分析が行われた。さらに、ロシュは、事業所レベルと全社レベルでの環境インパクトを管理するために従来から自社独自の「エコバランス」評価を行ってきたが、今回このエコバランスアプローチとNCAとの比較も実施された。エコバランスアプローチでは、事業所ごとの資源消費量、環境因子排出量などの定量データの分析を行ってきたが、NCAではエコバランスアプローチでは対象とされなかったインパクト・ドライバーや依存度を発見することができたという。
NCAでわかった重大ポイントは9つにまとめられている。
- NCAでのインパクト金額換算結果は、既存のエコバランスアプローチで得られた結果と類似したものとなった。
- NCAは、エコバランスアプローチに比べ対象分野が幅広く、新たに廃棄物燃焼や従業員の出張からの温室効果ガス排出量などマイナス要素や、事業所内の緑地、動物生息地や屋内植物が生物多様性や従業員のヘルス&ウェルビーングに寄与するプラス要素を見出すことができた。
- NCAのインパクト金額換算により、企業やステークホルダーが影響度合いを理解しやすくなった。
- NCAにより、ロシュは環境への負の影響を与えて入るものの、影響評価額が企業純利益に比べ小さく、依存している自然資本のリスクが切迫しておらず、すでに同社が重要なインパクトには対処・管理していることから、ロシュの事業継続にとって脅威とはなっていないことがわかった。
- 金額換算では、スイスの6拠点全体におけるマイナス影響は年間純利益の6.2%(このうち5%は温室効果ガス排出によるもの)。
- NCAにより、社員食堂での自然資本消費・排出、生物多様性の管理、室内外の緑地スペースが従業員に与えるヘルス&ウェルビーイングなど新たな潜在的な重要性の高い環境課題を特定することができた。
ロシュが今回行ったNCAのパイロットプログラムは、他にも、コカ・コーラ、ダウ、ヒューゴ・ボス、ケリング、ナチュラ、ネスレ、ネスレネスプレッソ、シェル、オラム・インターナショナルの9社が実施している。
【参照ページ】Roche Natural Capital Protocol Pilot: Summary Report
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