Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【オーストラリア】ウエストパック銀行、カーマイケル石炭採掘への融資拒否を発表。4大銀行全て撤退 2017/05/13 最新ニュース

 オーストラリア4大銀行の一つ、ウエストパック銀行は、インドの新興財閥アダニ・グループが、オーストラリア・クイーンズランド州で計画している「カーマイケル石炭採掘プロジェクト」への融資を承認しない決定を下した。4月28日に発表した新たな気候変動ポリシーの中で、新規の一般炭採掘事業への融資は「既存の石炭生産盆地に限定する」と定めたため。英紙ガーディアンによると、これによりオーストラリア4大銀行全てが、事業費が160億豪ドル(約120億米ドル)とされている同プロジェクトへの融資を非承認もしくは撤退という結果になった。

 ウエストパック銀行は、オーストラリアでコモンウェルズ銀行に次ぐ2番目に大きい銀行。発表した気候変動ポリシーの中では、さらに、採掘する石炭熱量を「少なくとも世界でトップ15%」、すなわち6,300キロカロリー/kg以上の熱量を有する石炭に限定することも規定した。それに対し、アダニ・グループが採掘予定のカーマイケル炭鉱は、これまで熱量が4,950キロカロリー/kgしかなく、またこれまで融資していない鉱区であるガリリー盆地に位置している。そのため、ウエストパック銀行の新規定を満たさない。

 カーマイケル石炭採掘プロジェクトに対しては、これまでも大きな環境影響が懸念されていた。背景には、鉱区が世界最大のサンゴ礁帯で世界遺産に登録されているグレートバリアリーフの近いことや、石炭増産が気候変動の加速につながることなどがある。近年、環境NGOが、同プロジェクトに連邦政府やクイーンズランド州政府が公金を投入することに抗議を展開し、銀行に対しても対応を求めていた。

 アダニ・グループの「カーマイケル石炭採掘プロジェクト」構想は、数年前から事業化が進んできた。まず、アダニ・グループ港湾会社であるムンドラ・ポート・アンド・スペシャル・エコノミック・ゾーン社が、アボット・ポイント石炭積出港の拡張事業に伴い、2011年にクイーンズランド州政府と99年間のリース契約を締結。その際に、ウエストパック銀行も2件で5億4,300万米ドルを融資したほか、4大銀行のコモンウェルズ銀行とナショナルオーストラリア銀行(NAB)も融資を実施していた。

 しかし、環境懸念が強まったことで流れが変わる。2013年にターミナルの30年リース料借り換えに協力し、継続融資を期待されていたドイツ銀行が2014年5月、継続融資の検討そのものを拒否。さらに2015年8月、コモンウェルズ銀行がカーマイケル石炭採掘プロジェクトのファイナンシャル・アドバイザーを辞退。同年9月には、NABも同プロジェクトへの融資を停止すると発表した。続いて、201612月、オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)も融資を停止した。

 ウエストパック銀行の融資拒否決定の前の今年3月、オーストラリアの環境NGO「青年気候変動連合(Australian Youth Climate Coalition)」が、アダニの石炭事業反対キャンペーンとして、シドニー、ブリスベン、メルボルン、キャンベラ、タスマニアにあるウエストパック銀行のATMの画面にビラを貼りつけて利用者に呼びかけを行う等、同行へのプレッシャーを激化させていた。同じく国際環境NGOの350.orgも反対キャンペーンを展開していた。

 環境NGOは、プロジェクト停止を求め裁判所にも提訴していたが、クイーンズランド州最高裁判所は2016年11月に「同州の環境保護法に触れるものではないと」棄却、NGO側が敗訴している。しかし、今回ウエストパック銀行が融資拒否を決定したことで、連邦政府のマット・キャナバン資源・豪北部担当大臣は、同行を強く非難。クイーンズランド州住民に背を向ける行為だとして、市民に住宅ローンや定期預金にウエストパック銀行を利用せず、地元を支援する銀行を利用するよう呼びかけている。同大臣は、ウエストパックが設立当初の「ニューサウスウェールズ銀行」に名称を変更するつもりではないかとまで述べ、憤りを露わにしている。

 また、アダニ・グループは、今回の融資拒否のあとも、プロジェクトを実施していく姿勢を崩していない。

 オーストラリアは、世界有数の石炭生産国であり、世界一の石炭輸出国であるが、オーストラリアの銀行は、気候変動への関心が世界トップクラスに高く、今回の決定に繋がったと言える。ウエストパック銀行のブライアン・ハ-ツァーCEOは、気候変動対策向けの融資を現状の63億米ドルから2020年までに100億米ドルに、さらに2030年までには250億米ドルに増額することを表明。さらに、「ウエストパック銀行は気候変動が環境問題であると同時に経済的課題でもあると認識しており、オーストラリア経済がゼロ排出経済へと変革するのを支援する重要な役割がある」と、今後の方向性を強調している。

【参照ページ】Big four banks distance themselves from Adani coalmine as Westpac rules out loan
【参照ページ】豪州:ANZ銀行、インドのAdani社のCarmichael炭鉱の開発に融資せず
【参照ページ】インド複合企業アダニ、豪石炭積出港の拡大に当局の承認求める
【参照ページ】豪グレートバリアリーフに資源ビジネスの脅威
【参照ページ】グレートバリアリーフ周辺に土砂投棄へ:豪当局が承認
【参照ページ】ドイツ銀行、QLD港湾開発融資拒否
【参照ページ】Climate Activists Target Westpac ATMs In Adani Mine Protest
【参照ページ】Supreme Court dismisses Adani mine challenge

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

Facebookコメント (0)

ページ上部へ戻る