【人権】オーストラリア版現代奴隷法の制定への動き 2017/09/05 体系的に学ぶ

 英国の現代奴隷法(開示関連条項)は2015年10月に施行され、英国企業のみならず、日本企業(本社)を含む英国外の企業もステートメントを順次開示してきている。筆者自身も昨年来、複数の日本企業(本社)の開示のサポートをしているが、開示を行う日本企業(本社)の数は着実に増加しているように見受けられる。

 こうした中、オーストラリアでも、同国版の現代奴隷法を制定する動きが加速している。本年8月16日、オーストラリア政府(法相)は、同国版現代奴隷法を制定することを表明し、概要案と共に意見募集手続の開始を発表した。意見募集手続は10月20日まで行われる予定である。

 現段階の概要案によると、同国に本店があるか又は事業の一部を同国で実施している事業体であって、毎年1億豪ドル(現在の為替レートで約87億円)超の総収入を得ている場合には、毎年、事業及びサプライチェーン(二次サプライヤー以降を含む)上で取り組んだ措置を開示することが求められる。また、開示項目については、一定の内容(事業体・サプライチェーンについての説明、リスクの説明、ポリシー・対策とそれらの有効性、及び、デューディリジェンスとその有効性)が必須項目として定められる予定である。さらに、開示に際しては、取締役会の承認と、取締役の署名も必要となる見込みである。加えて、各事業体はウェブサイトでの開示を行う他、オーストラリア政府等が運営する開示システム上での開示を行うことも必要となる。なお、英国と同じく、直接的な罰則は定められない見込みである。詳細についてはオーストラリア政府からガイダンスが公表される予定とのことである。なお、同法の審議は来年の同国議会で行われる見込みである。

 その他の国だと、オランダでは、児童労働対策を目的として、同国の消費者向けに商品・サービスを提供する国内外の一定規模の企業(成立する法律・行政命令の内容次第で、日本企業も含まれる可能性が大いにある)にデューディリジェンスの実施を義務付ける法律を制定する動きも加速している。このように、海外で関連法令の制定が進展していることから、国際的な活動を拡大している日本企業としては、英国現代奴隷法上の開示を積極的に行い、デューディリジェンス等の対策を含めたノウハウを蓄積して、各国の関連法令の制定に備えることも、合理的な企業戦略として一考に値すると思われる。


 本稿は、一般的な観点で情報を提供するものであり、その正確性を保証するものではなく、また、特定の案件に関して法的アドバイス等を提供するものでもない。個別の案件についてはその具体的状況に応じ、弁護士等の専門家の適切な助言を求めて頂く必要がある。なお、本稿に記載している見解はすべて執筆者の個人的見解であり、所属する組織等の見解ではないことにご留意頂きたい。

著者プロフィール

蔵元 左近

弁護士(日本・ニューヨーク州)。オリック東京法律事務所勤務。国内・海外での不動産ファイナンス、M&A、紛争案件等の企業法務全般を取り扱う。近時は、日本企業のグローバル・コンプライアンス体制の強化、ステークホルダー(労働者・労働組合・現地住民・サプライヤー・国際NGO・政府当局等)への対応を含む危機管理案件、ESG関連法務にも注力しており、英国現代奴隷法対応の他、グリーンボンドやソーシャルボンドを含むESG投資のサポートも行っている。(ウェブサイト

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