EU理事会と欧州議会は12月15日、第4次マネーロンダリング指令(2015/849)を改正し、実質株主や信託の実質受益者の開示を義務化することで合意した。海外では株式等の有価証券の名義貸しやが慣行化しており、犯罪行為や脱税にも使われることが少なくない。また、信託を用いた投資運用により実質受益者が把握しづらいという問題も発生している。今回の合意を受け、今後正式な立法手続を開始する。
今回の改正は、2016年に法律事務所モサック・フォンセカからパナマ文書が流出し租税回避の状況が明らかになったことや、テロ集団の資金調達、仮想通貨の急激な高騰が契機となった。改正第4次マネーロンダリング指令の主な内容は、
- 企業に関し、実質株主を登記簿等で一般公開する
- 信託に関し、実質受益者情報を、税当局、法執行当局や、弁護士等マネーロンダリング防止規則に関わる他の関係者に利用可能にする
- EU域外企業の株式を保有する信託に関し、実質受益者情報の開示を書面で要求できる制度を確立する
- EU加盟国は、登記簿に提出された実質株主や実質受益者に関する情報を認定する
- 仮想通貨に関し、販売所や取引所での匿名での口座開設や取引を禁止する
- プリペイドカードを用いた匿名の支払を店舗では150ユーロに、オンラインでは50ユーロに制限する
今回の法改正議論では、タックスヘイブンと見られている英国、ルクセンブルグ、アイルランド、マルタ、キプロスから反対意見が出たが、最終的には合意に至った。EU加盟国は、改正が正式に決定した後、国内法整備までに18ヶ月間の猶予期間が認められる。しかし、英国では主要地域では通常の税が課されるが、一定の自治権が認められている王室属領や海外領土ではタックスヘイブンとなっているところが多い。そのため、EUから離脱した後の英国が同ルールを導入するかは不透明。
マネーロンダリングや租税回避についての活動を展開してきた国際NGOのグローバル・ウィットネスやトランスペアレンシー・インターナショナルは、今回の改正を歓迎。しかし、透明性開示の問題が大きい信託について、実質株主並みに情報の一般開示が義務化されないことについては遺憾の意を表明した。
【参照ページ】Money laundering and terrorist financing: Presidency and Parliament reach agreement
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