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【EU】持続可能な金融についてのハイレベル専門家グループ(HLEG)、最終報告書発表

 欧州委員会が2016年10月設置した「持続可能な金融についてのハイレベル専門家グループ(HLEG)」は1月30日、EUのサステナブルファイナンスの促進に向けた最終報告書「Sustainable Finance Interim Final Report」を発表した。報告書には、EUのサステナブル・ファイナンスの現状分析と欧州委員会に対する提言が記載されている。HLEGは、2017年7月に中間報告書を発表していた。欧州委員会は同報告書を受け、包括的なアクションプランの設計に入る。

【参考】【EU】持続可能な金融についてのハイレベル専門家グループ(HLEG)、中間報告書発表。改革案示す(2017年7月18日)
【参考】【EU】 欧州委「持続可能な金融についてのハイレベル専門家グループ」委員を決定(2017年1月9日)

 EUは、単一資本市場を構築する「資本市場同盟(CMU)」構想を進めており、サステナブルファイナンスはその重要政策の柱と位置づけている。資本市場同盟構想は当初、欧州債務危機等のマクロ金融システムの安定化に主眼が置いてきたが、こちらはすでに一定の成果が得られたとして、議論はサステナブル・ファイナンスに移っている。

 EUが定義する「サステナブルファイナンス」とは、投資ポートフォリオの選定においてESG要素を考慮するESGインテグレーション型投資だけでなく、持続可能な発展に資する分野への資金動員、さらには安定的かつ教育、経済、社会、環境テーマに長期的に対応できる金融システムの構築までを視野に入れた広範囲の概念。EUは、社会・環境分野での長期的目標を複数掲げているが、目標を実現するために民間資金を動員することにも大きな関心がある。今回、非常に多岐に渡る提言をまとめた。

主要分野の提言

  1. EUレベルでの「グリーン」や「サステナビリティ」の定義:専門委員会を設立し2018年中旬から定義議論を開始
  2. ESG要素や長期投資に向けて投資家責任の明確化:関連EU指令を改正し機関投資家や運用会社、議決権行使助言会社の義務を設定
  3. 気候変動関連の開示ルール制定:自発的な開示イニシアチブを支援し、EUレベルでTCFDガイドラインをルール化
  4. 個人投資家のサステナブル・ファイナンス促進:投資アドバイザーに個人投資家のインパクト志向性確認を義務化、ファンド透明性開示の促進、「グリーン」や「サステナビリティ」用語利用の要件確立
  5. サステナブル・ファイナンスのEU公式基準の制定:まずEUグリーンボンド基準(EU GBS)の策定と遵守義務化
  6. インフラ投資分野のサステナブルファイナンスの確立:専門機関「Sustainable Infrastructure Europe」の設立
  7. サステナブル・ファイナンス能力向上のためのガバナンス改革:取締役の義務やスチュワードシップの強化
  8. 欧州監督機構(ESAs)の役割拡大:気候変動リスク監督や投資時間軸のミスマッチ監視等を監督内容に追加
  9. サステナブル・アセットの分類:EUやOECDの既存の分類を基にサステナブル資産を明確に定義する分類手法を確立する
  10. グリーンボンドや他のアセットのEU認証:国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則(GBP)等を基にしたEUグリーンボンド基準と、他のサステナブル・アセットやサステナブル・ファンドのEU基準を制定する
  11. フィデューシャリー・デューティー(受託者責任):短期的リターンの追求という誤ったフィデューシャリー・デューティーの理解を是正するため、EUの金融ルールであるAIMFD、MiFID II、PRIIPs、UCITS、EuVECA、EuSEF、CRD V等に重大なESG要素や長期的サステナビリティを明確に盛り込む
  12. サステナビリティ情報開示:EUの非財務情報開示(NFD)指令の中に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のフレームワークを導入する
  13. 金融規制のサステナビリティテスト:EUが進める規制システム改革「ベター・レギューレーション・ガイドライン」でESG要素を明確に組み込む
  14. インフラプロジェクト改革:EU加盟国地方政府にサステナブル・インフラプロジェクトを助言し、投融資金融機関とマッチングするための機関「 「Sustainable Infrastructure Europe」を創設する
  15. 欧州監督機構(ESAs)の強化:ESAsの金融機関監督項目の中にサステナビリティ情報開示を導入し、競争上の公平性(レベル・プレイング・フィールド」を創出する
  16. エネルギー効率に関する公会計基準の変更:EU統計局「ユーロスタット」が定める省エネルギー契約(Energy performance contracts)による公的機関投資の会計基準を変更し、公的機関の財務諸表上の負担が軽減できるようにする

業界横断の提言

  1. 短期志向(ショートターミズム)の是正:短期志向圧力の分析、法規制との関連性の分析
  2. 個人投資家のスキル向上:サステナブル・ファイナンス・リテラシー向上
  3. 科学的根拠に基づく政策立案:EU及びEU加盟国支援のための専門機関「EU Observatory on Sustainable Finance」の設立
  4. 投資ベンチマークの改良:インデックス開発会社の情報開示促進や、証券監督者国際機構(IOSCO)の「ベンチマーク原則」改正
  5. 財務会計基準の改正:非財務情報開示の強調、長期ポートフォリオの資産価値評価ルールの変更
  6. 省エネ分野へのファイナンス促進:省エネ不動産の資産評価手法や銀行融資評価手法の見直し
  7. 政策立案分野での「Think Sustainability First」原則の導入
  8. 国際会議等を通じた諸外国へのサステナブル・ファイナンス提唱

 その他、同報告書は、銀行、保険会社、運用会社、年金基金、格付会社・評価機関、証券取引所、投資コンサルタント、投資銀行を対象に各業界への個別の提言と、社会、自然環境、農業、海洋資源に対する各分野への提言もまとめた。

【参照ページ】Sustainable Finance: High-Level Expert Group delivers roadmap for greener and cleaner economy
【報告書】Final report of the High-Level Expert Group on Sustainable Finance

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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