【日本】政府、国際捕鯨委員会IWCからの脱退方針発表。文化的理由では国際理解は難しい 2018/12/25 最新ニュース

 日本政府は12月20日、国際捕鯨委員会(IWC)から脱退する方針を固め、自民党の関係議員に伝えた。今後、商業捕鯨を日本の領海や排他的経済水域(EEZ)で再開する見通し。日本は、過去の調査捕鯨を通じ、クジラの個体数が回復していると主張してきたが、IWCや国際裁判で認められるまでには至っていない。

 IWCは1948年に発足し、現在の加盟国は89カ国。日本は1951年に加盟した。IWCは1982年、クジラの資源量回復のため、1982年に商業捕鯨モラトリアム(一時停止)を採択し、それ以降、加盟国は商業捕鯨が禁止されている。また、同モラトリアムでは、「遅くとも1990年までに、委員会は、この決定が鯨類資源に与える影響について包括的評価(CA)を行なうとともに、同規定の修正および他の捕獲頭数の設定について検討する」と規定しているが、今まで包括的評価や再検討は実施されていない。

 捕鯨については、日本、ノルウェー、アイスランド、カナダ、米国(イヌイット)、ロシアの捕鯨国と、欧米及びオーストラリア、ニュージランドを始めとする反捕鯨国の間での論争が数十年続いている。IWCの加盟国は、当初は数カ国だったが、双方の陣営がお互いに与する国に加盟を呼びかけた結果、今では海に面していない国も含め88ヶ国が加盟している。捕鯨の論争については、文化的な対立はもちろん背景にはあるものの、IWCの議論では一貫して科学的な個体数減少をモラトリアムの論拠としてきた。IWCのモラトリアムを解除しないことの不当性や、日本が実施している調査捕鯨を通じた個体数回復による商業捕鯨解禁ついては、日本は2010年からの国際司法裁判所(ICJ)での南極海捕鯨裁判で強く主張したものの、結果的に2013年に日本が敗訴するという結果に終わっている。

 またIWCでは、クジラを重要なたんぱく源としているイヌイット等の先住民を念頭に、モラトリアム下でも「先住民生存捕鯨」を認めており、これによりカナダ、米国の北極海側では先住民による捕鯨は継続的に行われている。日本では、国際的に先住民として認識されている民族として「アイヌ民族」等がいるが、過去の捕鯨産地である和歌山県の「大和民族」が先住民なのかという問題も潜んでいる。これに対し、日本政府は、「先住民の定義が確立されておらず、人種差別的な適用が懸念される」との立場をとっている。

 このような事情を背景に、伝統を理由に商業捕鯨の再開を一貫して求めてきた日本政府は、IWCで主張が受けいられず、ICJでも認められなかったことから、IWCからの脱退を決断したと言える。NHKの報道によると、日本政府は、「新たな国際機関を設立して捕鯨を行うか、オブザーバーという形でIWCの総会や科学委員会に関わっていくことなどを検討」するという。

 自民党の二階俊博幹事長は12月21日、IWCからの脱退について、「他国の食文化に文句を言ったり、高圧的な態度で出てきたりする国がありますか。日本がそんなことを他国にしたことありますか」と主張。文化的理由を持ち出し商業捕鯨再開の正当性を述べた。しかし、国際的な理解を得たり、今後の国際裁判リスクを念頭に置くと、調査捕鯨により個体数回復が確認されるもののIWCでは適切な議論が開始されないというサステナビリティの観点からの発言や主張が求められる。

 これまで日本の捕鯨活動を度々妨害してきた反捕鯨団体「シー・シェパード」のポール・ワトソン創設者は、日本のIWC脱退検討を強く非難。ワトソン氏は、日本などの要請で国際刑事警察機構(ICPO)から国際指名手配され、容疑者となっている。しかし、シー・シェパードという団体は今も顕在で、今後日本の領海やEEZ内で捕鯨船や海上保安庁との衝突の可能性もある。

 日本政府は昨今、韓国との徴用工案件、北朝鮮との核問題等、国際理解を必要とする事案を多数抱えている。また国際的に生物多様性や海洋生態系の問題にも大きな関心が集まり、来年にはG20議長国という立場も控えている。政治的にもこのタイミングでこのやり方でのIWC脱退発表は本当に適切だったのか。

[2018.12.27追記]
政府は12月25日、IWC脱退を閣議決定。同26日、IWC側に脱退を通告した。

【参照ページ】政府 国際捕鯨委員会から脱退の方針固める 商業捕鯨再開へ

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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