【国際】加速する培養肉栽培の研究開発。水消費量や二酸化炭素排出量削減への期待の一方懸念も 2019/01/06 最新ニュース

【国際】加速する培養肉栽培の研究開発。水消費量や二酸化炭素排出量削減への期待の一方懸念も 1

 食肉の生産に向けて、大学や企業の研究所等で家畜および家禽類の幹細胞を採取し、培養する研究開発が加速している。米サンフランシスコに本拠地とするメンフィス・ミーツやジャスト、イスラエルのフューチャー・ミート・テクノロジーズが先導。ジャストはこれまでに約250億円以上の資金を調達し、肉類に加え海産物の培養を進め、培地となる独自の血清「植物ベースのカクテル」を開発したという。英紙ガーディアンは、タイソン・フーズ、カーギル等の食品大手に加え、ビル・ゲイツ、リチャード・ブランソン等の資産家による培養肉への投資を報じている。

 「培養肉」は、英語ではcultured meat、lab-grown meat、in vitro meat、clean meat等の用語が使われ、日本語でも「クリーン・ミート」と表現される場合もある。米国農務省(USDA)の報告書によると、2018年に平均的な米国人は、100kg以上、1人1日平均約274gの肉類を消費すると推計されている。近年は食材の多様化やベジタリアンの増加等により食肉以外からタンパク質を摂取する傾向もあるが、多くの人にとっては家畜や家禽の肉が主要なタンパク源となっている。

 培養肉が普及した場合、環境面ではどのような影響があるだろうか。2011年にオックスフォード大学とアムステルダム大学の研究チームが試算したところ、1,000kgの培養肉の生産には、エネルギーを26から33GJ、水を367から521㎥、土地を190から230㎡必要とし、二酸化炭素排出量が1,900から2,240kg排出される。この数値をヨーロッパにおける従来の畜産と比較した場合、培養肉の方がエネルギーの使用を7%から45%、水を82%から96%、土地を99%、二酸化炭素排出量を78%から96%削減できることが明らかになった。削減幅にバラツキがあるのは、家畜類の中で環境への負荷がすべての側面で最大なのは牛肉であり、羊肉、豚肉と比較すると突出しているため。その一方、すべての側面で負荷が最少なのは家禽であり、この差が大きい。

 研究チームは、上記の計算には輸送や冷凍・冷蔵に必要なエネルギー等は入っていないため、その分を加算した場合、培養肉の効用は一段と大きいと指摘する。また培養肉の製造に必要とされる面積は僅かであることから、従来の畜産で余剰となった土地を再森林化し、温室効果ガスをさらに削減することを提案している。そして、培養肉にはまだ不明な点も多いが、人口増に伴う食料需要や環境問題への対策として、従来の畜産より効率的で可能性が大きいと結論づけている。

 米国農務省(USDA)と米国食品医薬品局(FDA)は、培養肉の研究開発が加速している状況を受けて2018年10月に公聴会を開催し、この革新的な食品の促進と、最高レベルの公衆衛生基準の維持に向けた規制の必要性がステークホルダー間で共有されたという。米食品医薬品法研究協会(FDLI)は、(1)食品添加物と同様の安全基準を満たしている、(2)公開されている科学的情報に基づき、有資格専門家によって安全であると確認される等のFDAの規定を満たしているとして、11月に培養肉の製造を認めた。

 政府機関による体制としては、FDAが細胞の収集、保管、増殖と分化を監督し、細胞を収穫する段階で監督はUSDAに移行し、食品製造と表示について取り仕切ることになった。両機関はそれぞれの役割を果たすために協力体制を築き、情報を共有しつつ、培養肉に関わる技術の精緻化を積極的に推進するとしている。この新たな取り組みの実施に向けて、12月26日までパブリックコメントを募集していた。

 一方、全米肉牛生産者協会(NCBA)は、従来の畜産による牛肉と、同協会が「フェイク」としている培養肉との明確な違いをラベルにより消費者に示すことに重大な関心を示している。USDAとFDAが管轄を明確にしたことを評価しつつも、「本物の牛肉の製造業者と消費者が保護され、公正に扱われるべきであり、まだ多くの課題が残されている」と訴え、製造業者に対してパブリックコメントを送るよう呼びかけた。

 培養肉は動物の殺生も避けられるため、この動きを動物保護団体は歓迎しているという。さらに、鳥インフルエンザ、豚コレラ等、野外からもたらされる感染症の危険性は極めて小さくなりそうだ。今後の課題としては、更なる安全性の確保や、現在進められている低価格化の推進、そして消費者への十分な情報提供等が挙げられる。法務ニュースとリサーチを手がける米Juristは、市場に出回るまでには少なくともあと1年はかかると予測している。

【参照ページ】Lab-grown meat of the future is here – and may even sustainably fill demand
【参照ページ】Lab-grown meat would cut emissions and save energy
【参照ページ】Environmental Impacts of Cultured Meat Production
【参照ページ】Statement from USDA Secretary Perdue and FDA Commissioner Gottlieb on the regulation of cell-cultured food products from cell lines of livestock and poultry
【参照ページ】FDA and USDA announce production of lab-grown meat
【参照ページ】Cultured meat regulation ‘a step in the right direction’, says NCBA

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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