経済産業省は2月15日、2018年5月に閣議決定された海洋基本法に基づく「第3期海洋基本計画」に基づき、海洋エネルギー・鉱物資源開発計画を改定した。今回の計画では、メタンハイドレート、石油・天然ガス、海洋鉱物資源関係の各資源について、目標達成に至るまでの探査・開発の道筋と、そのために必要な技術開発等を定めた。同時に、今後約5年間の開発計画の方向性を定めた。
7月3日に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」の中でも大きな期待を示したメタンハイドレートについては、砂層型は、長期生産技術の開発や陸上産出試験、日本周辺海域での探査・試掘、海域環境調査等を実施。表層型は、回収技術の調査研究の成果を評価し、回収・生産技術の研究開発や海底状況調査、海域環境調査等を実施する。商用化については、今後の技術開発やコスト削減により、2023年度から2027年度の間に民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指す。
石油・天然ガスについては、基礎物理探査は、三次元物理探査船「資源」を更新し、「おおむね5万km2/10年」の目標を新たに設定。試掘(試錐)は、日本周辺における有望な地質構造への試掘機会増加に向けた検討を実施する。商用化時期の目標は掲げられていない。
その他の資源では、海底熱水鉱床やコバルトリッチクラスト、マンガン団塊、レアアース泥の4つが挙げられている。海底熱水鉱床は、5,000万tレベルの概略資源量把握、採鉱・揚鉱全体システムの構築、多様な鉱床に適用可能な選鉱・製錬プロセスの確立、環境影響評価手法の適用性向上・高度化等に取り組む。コバルトリッチクラストは、資源量調査を継続しつつ、海底熱水鉱床の成果を活用した採鉱技術開発や、選鉱・製錬試験プラントの設計、環境基礎調査等を実施。マンガン団塊は、国際海底機構のルールに従った調査等を実施。レアアース泥は、各府省連携の推進体制の下で、戦略的イノベーション創造プログラム「革新的深海資源調査技術」の中で取組を進める。しかし、いずれも将来商用開発の目処は立っていない。
メタンハイドレートと石油・天然ガスについては、エネルギー安全保障の観点から、国産資源として期待を集めている。しかし、気候変動という大きな影が差す。2020年代後半から商業開発をしたいメタンハイドレートも、二酸化炭素に比べ約25倍も温室効果があるメタンが海洋に溶出すると、気候変動に大きな悪影響を与えると言われている。また、メタンハイドレートと石油・天然ガスは、燃焼すれば当然二酸化炭素を大量に排出する。今回の計画の中でも、「環境影響評価」の項目があるが、「海洋生態系への影響等」については言及されていても、計画書のどこにも「気候変動」や「温暖化」という言葉は出てこない。
経済産業省は過去10年間、国際的トレンドを大きく見誤り、原子力発電や石炭火力発電を推進してきた経緯がある。民間企業での商用化についても、企業そのものが投資家からのプレッシャーを受け、二酸化炭素依存度の高い事業への意欲が大幅に後退している。海洋資源開発についても、政府は同じ轍を踏まないか。大きなリスクが潜んでいる。
【参考】【日本】政府、第5次エネルギー基本計画を閣議決定。技術自給率の概念を新たに強調(2018年7月4日)
【参考】【日本】経済産業省とJOGMEC、海底熱水鉱床開発の総合評価結果を公表。経済性に課題(2018年11月5日)
【参照ページ】海洋エネルギー・鉱物資源開発計画を改定しました
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