【インタビュー】BNPパリバがサステナビリティ分野で業界を主導する狙い 〜サステナブルビジネス上級戦略顧問の視座〜 2019/02/22 事例を見る

 ESG投資やサステナブルファイナンスの分野で世界をリードするBNPパリバ。先日は、日本法人であるBNPパリバ証券のESGアナリスト部門に現状や思うところを伺ったが、今回はBNPパリバ・グループ全体でサステナブルビジネスの戦略部分を担うピエール・ルソー・サステナブルビジネス上級戦略顧問が2019年2月に来日したのを機に、BNPパリバの狙いや戦略を聞いた。

【参考】【対談】ESG投資に注力する仏金融大手BNPパリバ 〜何が原動力となっているのか〜(2018年9月20日)

まずルソーさんのBNPパリバでの役割は?

 現在、BNPパリバ・グループ全体のサステナブルビジネス上級戦略顧問に就いています。この仕事の前は、グローバル・マーケット事業のアジア太平洋地域ヘッドを務めていました。現在の私の仕事は、サステナブルビジネスの戦略について、グループのエンゲージメント部門長と投資銀行部門長の双方にレポーティングしています。当グループのCEOであるジャン=ローラン・ボナフェは、事業(ビジネス)とサステナビリティを統合することを強く推進しています。その中には、事業において社会や環境の観点を考慮するというものもありますが、新たな事業機会を創出することもあります。それを推進するため、世界各国にあるBNPパリバ・グループの各部門とうまく連携していくことが、私のミッションです。

 ですので、私には部下がいません。そうではなく、グループの各部門が私のコミュニケーション相手です。この体制は、当社がサステナビリティを事業と分離したものではなく、ビジネスの新たな「規範(Norm)」と考えていることの表れです。事業を担うそれぞれの部門もこの「規範」を育んでいくことが重要だという共通の認識を持っています。

 私の役割以外にも、BNPパリバのサステナビリティ部門には、フィランソロピー(慈善活動)を担当する部門とCSR部門があり、事業ポリシーや対外的なレポーティングなどはCSR部門の所管です。

BNPパリバはサステナブルファイナンスを世界的にリードしていると思いますが、どうお考えですか?

 BNPパリバは、2018年にユーロマネー誌の「World’s Best Bank for Sustainable Finance 2018」を受賞しましたので、そう認識していただいていることは嬉しく思います。しかし、経済界全体で見たら、残念ながらBNPパリバはまだ遅れていると思っています。

 国連責任投資原則(PRI)が発足したのが2006年。そこから、アセットオーナーたちがサステナビリティに向かって動き出しました。企業には、2011年から「CSV(共通価値の創造)」の概念が普及し始めていきます。地方行政では、「C40」が2005年から活動しています。それに比べ、我々銀行業界が「責任銀行原則(PRB)」を発足させたのは、2018年とつい最近です。現在、PRBに署名している銀行数はたったの28(2018年11月採択時)。一方、世界には銀行がいくつあるか知っていますか?1.6万社です。銀行は経済の中で中心的な役割を担っていますが、銀行界が動き出したのは、一番最後なんです。

 BNPパリバが、サステナブルファイナンスを重視している理由は、クライアント、すなわち我々のお客様がその方向に動き出しているからです。当社のクライアントである投資家も企業も、すでに動き出しています。私がグローバル・マーケット事業の責任者だった今から7年前、初めてサステナブルファイナンス専任の担当者を置きました。それはアセットオーナーの声を掴んだ結果です。銀行は、クライアントの声にもっともっと耳を傾けなければなりません。そういう点で、BNPパリバは他の銀行よりも多少先んじているかもしれませんが、銀行業界そのものが遅れています。

それでもなぜBNPパリバは銀行業界の中で先陣を切った?

 私は、ビジネスをする上で、各業界のサステナビリティ分野での「Champion(先駆者)」と一緒に仕事をすることが非常に重要だと考えています。ビジネスでは、まずChampionと協働するものが先を行き、その後フォロワーが現れます。そして最後に「Laggard(出遅れた者)」が表れますが、Laggardはそのうち市場から姿を消します。BNPパリバにとって、投資家のChampion的存在はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)。フランス企業ではネスレ、ダノンなど、他にもユニリーバ等がいます。まず、Championから支持される存在になることが非常に大切です。

 誰が各業界のChampionかを把握するために、さまざまなイニシアチブにも参加しています。例えばWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)。そこでの議論に参加していれば、どの企業がChampionで、どの企業がフォロワーなのかわかってきます。そしてChampionとの対話を開始します。

フォロワーを選択したほうが楽という考え方も日本にはあります

 正直申し上げて、BNPパリバの過去は、フォロワーの歴史でした。これまでリーダーになろうとしたことは一度もなく、リーダーになるという企業のDNAも文化もありませんでした。ですが、今回初めて「サステナビリティ」ではリーダーになろうと、私達のCEOは決めました。私は彼ではないので、本当のところはわかりませんが、背景にはChampionとビジネスをすることの重要性や、リーダーでなければChampionと仕事ができないと考えたのだと思います。

 現在、国際的にユニバーサル(総合的)な金融サービスを提供している銀行はBNPパリバを含め数えられるほどしかありません。シティグループ、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、HSBCなどです。さらに、国際的に展開しているユニバーサルな銀行になれば、クロスボーダーで投資家、企業、起業家を結びつけることができ、強い存在になれます。そうなるためには、Champion顧客とビジネスができるようにならないといけません。

 一方、フォロワーでいると、リーダーたちが作ったゲームのルールに従って行動するだけです。業界の中で差別化し、率先してルールを作る側に周り、顧客を掴むからこそ、市場シェアも拡大できるのです。

BNPパリバはどんなサステナブルファイナンス事業を展開もしくは予定していますか?

 キャピタル・マーケッツ分野では、グリーンボンドやサステナビリティボンド、グリーン証券化等があります。トレードファイナンス(貿易金融)分野では、流通の透明性を高める取り組みをしています。また、プライベートエクイティ(PE)やベンチャーキャピタル(VC)の事業にも力を入れています。サーキュラーエコノミー(循環経済)を推進するリース事業も重要です。リテール金融の分野では、家庭での太陽光発電パネル設置、電気自動車、蓄電バッテリー等の需要が出てきています。そして、サステナブル投資ソリューションを提供するファンド組成にも注力しています。

銀行にとっての新しいチャレンジは?

 全部で6つあります。まず、投資家、企業、スタートアップの3者をアレンジする「協働」。これまで銀行は、3者と個別に話をしてきましたが、今後は垣根を超えた連携が不可欠です。特に、銀行にとっての事業パートナーを見つけることも重要です。例えばフィンテックと言えば、私の言いたいことを想像して頂きやすいかもしれません。

 2つ目は、銀行としては今後、新商品ではなく、「新たな事業モデル」を創造していかなければ、顧客の期待に応えられません。

 3つ目は、「未来思考」。銀行の仕事は従来、過去のデータだけを見てきました。信用リスクの測定も過去のデータから算出してきました。しかし、今後の新しい世界では、過去だけを見ているわけにはいかず、未来を見通すことが必要です。そのためにシナリオ分析が重要となります。

 4つ目は、「ビッグデータの活用」。とりわけ事業がもたらすインパクトを測定し、見極めていくためのビッグデータが必要となってきます。

 5つ目は、「リスクマネジメント領域の拡大」です。従来のリスク分析は、新たな投融資リスクの分析のことを指しましたが、これからは既存投融資のリスクを分析し、事業を除外することも検討しなければなりません。例えばBNPパリバは、石炭、たばこ、シェールガスへのファイナンスを禁止しました。

 最後は、「信頼」。信頼を高めるためには、新たなKPI(主要業績評価指標)が必要となります。例えば、グリーンファイナンスについては、銀行は最近、グリーンファイナンスをどれだけ増やしたかをアピールするようになりました。しかし、問題はグリーンをどれだけ増やしかだけでなく、グリーンと「ブラウン(非グリーン)」の比率がどう変わってきたかということも示さなければなりません。そういう考えから、BNPパリバでは、新たなKPIとして全体に占めるグリーンの割合を測定し、自主的に開示しています。

気候変動に次に注目している課題はありますか?

 海洋には注目しています。海洋には、船、船員、生物多様性等、数多くのテーマがあります。海については、人類の叡智をもってしても、まだ解明されていないことが多くありますので、大きな関心があります。

今後の展望について

 欧州は、法規制やガイドライン、フレームワークを作るのが早いという強みがありますが、企業のアクションには時間がかかるという弱みもあります。一方、米国、中国、インドの企業は、一度動き始めたら欧州より遥かに速いスピードでアクションを進めます。日本でもGPIFが動いたことで、企業に大きな変化を起こしました。

 日本企業の経営者へのメッセージとしては、正しい行動を採るために現状をしっかりと分析、評価してもらえればと思っています。フォロワーよりもリーダーにならなければいけませんし、何もしなければ市場に残れません。リーダーになるための追加コストに、あまり囚われないでいただきたいです。そのコストは、動かないことで未来に背負うコストよりも遥かに小さいものですから。

 上の図は、私が8年前に作成した「サステナビリティ・ロードマップ」です。企業はまず、「Ethics(倫理)」観点でのCSRからスタートしました。今のBNPパリバはそこから進化し、事業の中にサステナビリティを統合しています。そのとき、サステナビリティは、もはや(対外的な)コミュニケーションだけのテーマではなく、事業戦略の要素になっています。そして今、BNPパリバは「Integrate」のフェーズに入ろうとしており、ここでの重要なテーマは、企業文化づくりです。そして最後の「Transformative」のフェーズでは、社会全体をサステナビリティの方向に導いていく存在になっていきたいと思っています。

著者プロフィール

聞き手:夫馬 賢治

株式会社ニューラル 代表取締役CEO

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