世界経済フォーラム(WEF)は6月13日、米国、英国、カナダ、オランダ、オーストラリア、日本の6ヶ国について、老後の資産準備の状況を分析したレレポートを発表した。日本人は、他の5ヶ国に比べ、退職後の資産貯蓄が半分の4.5年分しかなく、さらに他国より寿命が長いことも考慮すると、男性で約15年、女性で約20年分の生活資金不足に陥ると発表した。
老後の資金不足については、各国政府は年金を用意する等で対応している。しかし、WEFは、政府の年金制度は負担が増しており、個々人で退職後の資産準備を行わざるを得なくなってきているとした。その上で、政府に対し、個々人の異なる老後資金ニーズに対応するためには、個々人が長期投資運用によって老後資金を増やしていくことを促す規制改革を進めるべきと提言した。
(出所)WEF
将来に向けた投資の状況では、先進国の中で日本は最も厳しいという分析結果となった。先進国では、老後の生活への備えとして20代の頃から長期リターンを追求するため株式や不動産投資信託(REIT)、インフラ投資ファンドへの投資を積極的に行っているが、日本は、現金預金と確定拠出年金(DC)でも利率の低い債券への投資がほぼ100%で、老後の資金の備えにはなっていない状況ということが明らかとなった。新興国では、中国でも20%、インドでも10%を長期リターン追求のためのファンドに投資しており、日本はこれよりも将来の備えができていない。
(出所)WEF
日本では、金融庁の金融審議会 「市場ワーキング・グループ」が6月3日、報告書「高齢社会における資産形成・管理」をとりまとめ、高齢夫婦無職世帯は所得を年金給付に依存していき平均的に毎月5.5万円の赤字になると指摘。これを補うには老後までに2,500万円の資産形成をしておく必要があるとした。そのため、これまでにもNISA(少額投資非課税制度)や個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)等を導入し、個々人が長期投資しやすい環境も整備してきた。しかし、麻生太郎財相兼金融担当相は6月11日、月に5.5万円の赤字との指摘について「著しい誤解や世間への不安を与える。政府のスタンスと違う」として否定し、同報告書を受け取らないと話した。日本の年金制度に対する自信を見せた。その後、5.5万円は年金を所管する厚生労働省が提出した資料を基にしていたことが判明したが、安倍晋三首相や菅義偉官房長官も「誤解」と述べ、担当の三井秀範企画市場局長は6月14日、国会で「ミスリードした」と謝罪する事態となった。
【参照ページ】Retirees worldwide will outlive their savings by a decade – and women will fare worse
【参照ページ】金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について
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