米証券取引委員会(SEC)は11月5日、委任状勧誘規制に関する改正案を採択し、正式に改正案として提出することを決定した。今後60日間、パブリックコメントを募集する。
SECは8月、議決権行使助言会社による議決権行使助言は「委任状勧誘」に該当するとの解釈を示したため、機関投資家のアクティブオーナーシップを阻害するとして、国連責任投資原則(PRI)から反対されていた。SECは、同案は長期志向の経営が求められる現状に鑑み、要件の更新を行ったと強調した。
【参考】【アメリカ】SEC、投資顧問会社の議決権行使や議決権行使助言会社活用に関するガイダンス発行
修正案では、SECは株主による委任状勧誘行為に対し、2,000米ドル以上の株式保有を義務付ける既存の規定の継続。さらに、長期投資への姿勢を示すため、3年間以上の株式保有も必須化した。また、株主提案は1株主1つに限定する「One Proposal」ルールを導入する。
さらに、株主提案の再提出についても新たに条件が課される。初期提案で投票株主から5%以上の支持を得ることができなかった株主提案は、翌3年間、同企業の株主総会で再提出することができなくなる。また、過去5年間に2回または3回提出された株主提案は、それぞれ15%、25%の支持を得なければ、翌3年間再提出することができなくなる。株主提案の再提出に関する規定が更新されるのは、1954年以来初。
SECによると、2018年だけで約5,700件の委任勧誘状が同機関に報告され、250件以上の株主提案に対しては発行体から株主提案の却下可否判断を求めるノーアクションレター申請があったという。ノーアクションレターは、非公式な手続きであるものの、事前にSECの解釈を確認することで、当該行為に対しSECが何らかのアクションを取るかを把握できるため、発行体が申請することが慣行となっている。
今回修正案の検討にあたっては、過去の株主提案のレビューを実施。2011年から2018年までに、2回目以降の提出となる株主提案のうち、最終的に過半数の支持を得た株主提案の98%は、1回目の提案で5%以上の支持を得ていた模様。3回目以降の提出の場合、最終的に過半数を得た株主提案の95%は、2回目の提出で15%以上、3回目以降の提出で25%以上の支持があったという。レビューの結果から、今回設定した閾値の有用性を強調した。
米ESG投資推進NGOのCeresは、同改正案に対し反対意見を発表。投資家による企業へのオーナーシップを制限し、投資家がリスクをマネジメントし、新たに発生している課題に対応することを妨げると批判した。
別途SECは同日、議決権行使助言会社に対する規制を強化する改正案も採択した。利益相反を防止するための情報開示に義務化や、助言発表後に発行体や他の議決権行使助言会社が、当該発表の誤りを指摘するためのレビュー及びフィードバック期間を設けること等を盛り込んだ。同様に、今後60日間、パブリックコメントを募集する。
【参照ページ】SEC Proposes Amendments to Modernize Shareholder Proposal Rule
【参照ページ】SEC Proposes Rule Amendments to Improve Accuracy and Transparency of Proxy Voting Advice
【参照ページ】Proposed changes to the shareholder proposal process would limit the ability of investors to manage risks
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