米ドナルド・トランプ大統領は4月3日、保健福祉省、国土安全保障省、米連邦緊急事態管理庁(FEMA)に対し、品不足となっている医療機器や医療用具について、メーカーに対し海外輸出を控え、国内流通を優先させるよう求める覚書(メモランダム)を発した。根拠法の一つとして、国防生産法も挙げた。これに対し、医療用マスクN95の海外輸出が制限されることになった化学大手3Mが反発している。
同覚書は、米国のブローカー、流通事業者、その他の仲介会社が、個人衛生用品等(Personal Protective Equipment: PPE)を海外輸出することを防止することが米国の政策と言明。PPEには、N95マスク(最も捕集しにくいと言われる0.3μmの微粒子を95%以上捕集できることが確認されているマスク)、その他マスク(N99、N100、R95、R99、R100、P95、P99、P100等)、エラストマ・マスク、医療用マスク、医療用手袋、実験用手袋が含まれるとした。さらにホワイトハウスは同日、米国の政策及び国益に合致している限りにおいて、同製品の海外輸出を妨げるものではないと声明を発表。事実上、海外輸出が制限されることとなった。
この発表の前日、トランプ大統領は自身のツイッターで「We hit 3M hard today after seeing what they were doing with their Masks. “P Act” all the way. Big surprise to many in government as to what they were doing - will have a big price to pay!」とツイート。理由を説明せずに、3Mを糾弾する発言を行っており、3Mとの間で何か揉め事があったことが明らかとなった。
3Mは4月3日、トランプ大統領の覚書を受け、米国内でのN95マスク生産は、FEMAからの発注を最優先に行うことが義務化されたことを明らかにした。また前週末に米国政府との間で協議し、その中で、同社の中国での工場で生産し米国へ輸出しているN95マスクを増産するよう米国政府から要求があったことも公表。それに対し、中国政府も10万枚を米国へ輸出することを許可したとした。一方、米国政府に対しては、3Mの米国での工場で生産したマスク(N95マスクではないと見られる)を、カナダや中南米に輸出することを禁止させる要求を批判。同社は、カナダと中南米での重要なマスク供給企業であり、輸出の禁止は深刻な人道懸念があると表明した。米国も他国からの輸入に頼っているものもある中、一方的な輸出禁止は他国政府からの報復を招くとしてきた。
3Mは3月31日、N95マスクの増産を大幅に進める計画を示し、米国内での供給増にも励んでいた。1月から始まった増産体制では、月産1億枚、年間11億枚の生産大勢を整備。そのうち米国内でも3,500万枚の生産能力を持ち、その前の7日間だけで、1,000万枚のマスクを全米の医療施設に提供。さらに、現在の生産能力をさらに2倍に増強し、年間20億枚の供給を可能にする設備投資計画も示し、米国での生産体制を5,000万枚にまで引き上げられるとしていた。
米国では、今後、民間人にもマスク着用を推奨するため、国内でのマスク確保を急いでいると見られる。カナダや中南米の医療機関向けにマスクを提供している3Mとしては、まずは医療機関を優先させる必要があるとの考えている模様。
さらにタイ・バンコクの空港では4月4日までに、3Mの中国工場で生産され、バンコク経由でベルリンに空輸されることとなったマスク20万枚が、何者かに強奪された。ドイツのベルリン市当局は、米国政府が関与したとしており、米国政府を「海賊行為」と非難。「国際規範を守るべき」と声明を発表した。
【参照ページ】Memorandum on Allocating Certain Scarce or Threatened Health and Medical Resources to Domestic Use
【参照ページ】Statement from the President Regarding the Defense Production Act
【参照ページ】3M Response to Defense Production Act Order
【参照ページ】3M Outlines Latest Actions on COVID-19 Response
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