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【国際】UNDPや各種団体、新型コロナで移民労働者やサプライヤー従業員の人権保護要請。アパレルと食品

 国連開発計画(UNDP)は4月10日、新型コロナウイルス・パンデミックに際し、企業が自己点検するための人権デューデリジェンス簡易チェックリストを発表した。UNDP以外にも、パンデミック後、人権、とりわけ発展途上国のサプライヤーの人権について各機関から発表が相次いでいる。

UNDPのチェックリストには、「準備期」「対応期」「回復期」の3つのフェーズにおいて、「労働安全衛生」「労働権」「プライバシー」「偏見・差別防止」「環境・コミュニティ・インパクト」「企業ポリシー・マネジメント」の6つの観点から、実施すべき項目を整理した。国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)、国連人権条約、国際労働機関(ILO)の中核的条約が考慮されている。

 今回のチェックリストは、UNDPが新型コロナウイルス流行後に進めているアクション「UNDP COVID-19 Integrated Response Offer」の一環。ツール開発に関する予算は、EUとスウェーデン政府が資金拠出しているプログラム「アジアのビジネスと人権」の枠で実施された。

 オランダに本部を置くアパレルNGOのClean Clothes Campaignは4月15日、日本の外国人技能実習生がパンデミックの中で、職場及び寮で、感染防止が十分でない密集空間に高い感染リスクに晒されているとするレポートを発表した。同レポートでは、元々、人権侵害が指摘されていた外国人技能実習制度において、パンデミックによりさらに人権侵害が強まっていると、英語で世界に発信。日本政府に対し、外国人技能実習生の人権が保護されるルールを迅速に導入するよう要求した。

 アジア諸国では、アパレル縫製企業の従業員から悲鳴が上がっている。生地生産サステナビリティを推進するアパレル業界団体Sustainable Textile of the Asian Region(STAR)は4月9日、グローバル・ブランド大手に対し、サプライヤーを保護するための9つの要望事項を発表。SATRに加盟するバングラデシュ縫製・輸出業協会(BGMEA)、バングラデシュ・ニット縫製・輸出業協会(BKMEA)、中国国家紡績・工業連合会(CNTAC)、カンボジア縫製業協会(GMAC)、ミャンマー縫製業協会(MGMA)、パキスタン靴下類縫製・輸出業協会(PHMA)、パキスタン繊維輸出業協会(PTEA)、パキスタン・タオル縫製業協会(TMA)、ベトナム繊維・縫製協会(VITAS)が共同で発表に加わった。

 同じく、移民労働者の人権侵害が指摘されてきた湾岸諸国では、アムネスティ・インターナショナルが4月14日、各国政府に対し、パンデミックによる人権侵害リスクから移民労働者を保護するよう求める書簡を送付している。送付先は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン、クウェート、バーレーン。先駆けてカタールには3月31日に送られている。要求事項は、検査や医療支援アクセスでの平等待遇、感染防止措置と感染時または隔離時の所得補償、感染者の差別・偏見防止等。

 移民労働者の人権侵害リスクは、欧州でも指摘されている。欧州では、ライフライン確保のために農業活動の維持が続けられている一方、行動制限のため中東欧の季節農業労働者が西欧地域に入境できなくなった。ドイツは季節労働者の入境を維持する公式声明を出しているが、同様にEU域外からEU域内への移動もできなくなったことで、人手不足が発生。農業現場では少ない労働者に業務が集中するという過酷な労働環境に落っている。

 それに対し、米著名投資家で慈善事業にも力を入れるジョージ・ソロス氏が1979年に設立した慈善団体オープン・ソサイエティ財団運営のシンクタンクOpen Society European Policy Instituteは、農業事業者が全体の需要減に対し、賃下げで対応する姿勢にも警鐘を鳴らしている。欧州では、食糧供給を優先させるために労働規制を緩和しようとする政府も出てきており、さらに労働環境が悪化するリスクにも注目が集まっている。同NGOは、EUに対し、共通農業政策(CAP)による各国への補助金支給で厳しい労働・環境基準をかけ続けるべきと要請した。

 欧州のサステナビリティ推進団体European Coalition for Corporate Justice(ECCJ)も4月14日、欧州各国政府に対し、人権保護を強化することを求める声明を出した。要求自国は、人権・環境デューデリジェンスを義務化する法整備、救済アクセスの確保、企業への資金的救済の際に人権基準条件の導入の3つを求めた。英国の人権ビジネス研究所(IHRB)も4月16日、企業に対し、労働者の人権侵害と対応要求をまとめたレポートを発表している。

 アパレル・ブランド企業側でも、業界団体や各企業から4月上旬にサプライヤー保護を打ち出す声明が発表されている。

【参考】【国際】大手企業加盟のアパレルNGO、委託先サプライヤー保護でガイダンス発表。GAP、H&M等(2020年4月12日)
【参考】【国際】アパレルNGO、途上国別の対策ガイダンス提示。縫製工場の労働者が危機的状態(2020年4月7日)

【参照ページ】Human Rights Due Diligence and COVID-19: Rapid Self-Assessment for Business
【参照ページ】Forced labour and debt-trap: migrant workers in Japan face substantial risks during coronavirus outbreak
【参照ページ】Joint Statement on Responsible Purchasing Practices amid the COVID-19 Crisis
【参照ページ】Gulf: Concerns regarding migrant workers' rights during COVID-19 pandemic
【参照ページ】Open Society European Policy Institute
【参照ページ】From impossible to inevitable: corporate justice in times of COVID-19
【参照ページ】Respecting Human Rights in the Time of the COVID-19 Pandemic

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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