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【国際】世界経済フォーラム、ESG報告ガイドライン発行。4観点で21中核指標を設定

 世界経済フォーラム(WEF)は9月22日、ステークホルダー資本主義のレベルを測定するためのESG指数と情報開示の原則「ステークホルダー資本主義測定指標」を発表した。「人」「繁栄」「プラネット」「ガバナンス」の4観点、21の中核指標と34の拡大指標で構成され、地域及び業種を問わず適用可能なものにした。

 今回の策定した指標は、世界経済フォーラムの企業委員会である「国際ビジネス委員会(IBC)」が中心となってまとめた。IBCは2017年、長期的な社会ゴールと整合性のある目標を掲げる企業によって社会は最も良い形で存在するという概念をまとめた「Compact for Responsive and Responsible Leadership」を提唱。IBCに加盟する140社のCEOが署名した。2019年のサマー・ダボス会議では、IBCからESGの重要性と、林立するESGフレームワークの調和が必要ということを再確認していた。

【参考】【国際】世界経済フォーラム、ESG情報開示進展に向けた課題整理レポート発表(2019年1月28日)
【参考】【国際】国連と世界経済フォーラム、SDGs達成に向け6分野で戦略的パートナーシップ締結(2019年6月17日)
【参考】【国際】世界経済フォーラムとOECD、戦略的提携締結。サステナブル・インクルーシブな世界の成長(2020年1月28日)
【参考】【国際】世界経済フォーラム、新型コロナを機に、あらためてESGマテリアリティの重要性提唱(2020年3月25日)

 その後、IBCは、デロイト、EY、KPMG、PwCの4大監査法人と、統一ESG指標の検討を開始。また現在のIBC議長は、バンク・オブ・アメリカのを務めるブライアン・モイニハンCEOが務めており、バンク・オブ・アメリカも積極的に関わった。策定の中間報告は、2020年1月のダボス会議でも提示され、企業やNGO等200団体以上からフィードバックが集まり、それを踏まえて8月のサマー・ダボスで最終案を披露。機関投資家と企業から大きな賛同を得た。またサマー・ダボスでは、CDP、GRI、SASB、CDSB、IIRCのサステナビリティ報告ガイドライン策定機関からもIBCと協働する意思表明が始めて得られ、今回満を持して新指標が発表された。

中核指標(ガバナンス)

  • パーパスの設定
  • 取締役会の構成
  • ステークホルダーに影響を与えるマテリアリティの設定
  • 腐敗防止
  • 不正や非倫理的慣行を防止するための社内外の仕組み
  • 事業プロセスに機会とリスクを統合するための仕組み

中核指標(プラネット)

  • GHG排出量
  • TCFD実践
  • 土地利用と生態系への感度
  • 水ストレス地域での取水量と水消費量

中核指標(人)

  • ダイバーシティ&インクルージョン
  • 賃金平等
  • 新入社員およびCEOの賃金水準
  • 児童労働・強制労働リスク

中核指標(人)

  • ダイバーシティ&インクルージョン
  • 賃金平等
  • 新入社員およびCEOの賃金水準
  • 児童労働・強制労働リスク
  • 労働安全衛生
  • 社員研修

中核指標(繁栄)

  • 入社者数と離職者数及びそれらの分類
  • 財務指標
  • 設備投資額と配当・自社株買額
  • R&D支出額
  • 納税額

 今回設定された各々の指標に対しては、具体的な開示データを定めるとともに、GRIやSASB等との対応表も示されている。さらに各観点に対しては、その他の拡大指標も定められている。コア指標と拡大指標の違いは、コア指標は測定が重要かつ明確な指標。一方、拡大指標は測定手法が確立していないが、自主的な手法の策定も含めてリーダーシップが期待される指標。

 またマテリアリティについては、GRI、SASB、国際統合報告評議会(IIRC)、CDP、CDSBの5団体が9月に提示した「ダイナミック・マテリアリティ」の概念を尊重しつつ、どのレベルのマテリアリティを採用するかは、各社の判断に任せた。

【参考】【国際】GRI、SASB、CDP、IIRC等、非財務情報開示での合同アクション発表。ダイナミック・マテリアリティ提唱(2020年9月16日)

 今回、世界的に影響力のある世界経済フォーラムから新たなESG報告スタンダードが開示された意味は大きい。だが他にも、IFRS財団、証券監督者国際機構(IOSCO)、EUでも、同様に林立するESG報告ガイドラインを統一する動きがあり、4大監査法人や前述の既存5団体も各々の検討にも加わる動きをみせている。そのため、世界経済フォーラムの指標に収斂するかはまだ不明。

 GRIは、今回の世界経済フォーラムの発表を受け、9月24日に声明を発表。発表された指標のうち、多くがGRIから抽出されており、また指標を絞ったことで発行体の負荷は下がるだろうと、総論としては賛意を示した。但し、各論としては、盛り込まれた指標が少なすぎるという考えを示唆しつつ、特に納税額の項目については、GRIスタンダードの税指標と比べて大きく劣るとの指摘も行った。GRIは、名指しこそしなかったものの、IOSCOやIFRS財団等のESG報告スタンダード策定にも積極的に加わっていくことをあらためて伝え、全面的に世界経済フォーラムの指標に一本化する意思はないことを伺わせるメッセージを出している。

【参照ページ】Measuring Stakeholder Capitalism: Top Global Companies Take Action on Universal ESG Reporting
【ガイドライン】Measuring Stakeholder Capitalism Towards Common Metrics and Consistent Reporting of Sustainable Value Creation
【参照ページ】Sustainability metrics debate must include multi-stakeholder input

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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