菅義偉首相は10月26日、国会での所信表明演説の中で、日本政府として初めて2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)にするとの政策目標を表明した。今後、国別削減目標(NCD)として気候変動枠組条約事務局に正式に提出しにいくとみられる。
【参考】【日本】官邸のパリ協定長期成長戦略懇談会、提言発表。2070年までにCO2ゼロ目指す(2019年4月5日)
【参考】 【日本】政府、パリ協定長期戦略を閣議決定。経産省と文科省はCO2削減技術の課題分析報告書発表(2019年6月12日)
【参考】【国際】2050年までのCO2排出量ゼロを掲げている国は17ヶ国。日本は2070年のためカウントされず(2019年7月1日)
所信表明演説の中では、
「菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。わが国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」
と、目標を明確に宣言した。
それに続き、
「もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です。
鍵となるのは、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションです。実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進します。規制改革などの政策を総動員し、グリーン投資のさらなる普及を進めるとともに、脱炭素社会の実現に向けて、国と地方で検討を行う新たな場を創設するなど、総力を挙げて取り組みます。環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的にグリーン化を進めていきます。世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出してまいります。
省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換します。」
と説明し、気候変動対策と経済成長は両立できるという考えを表明し、イノベーションで難題を突破する方法性を示した。電源については、約10年間続けてきた石炭火力発電推進政策を抜本的に転換し、再生可能エネルギーを最大限導入すると言及。原子力政策についても「安全最優先で進める」とした。
今回のニュースは。海外でも大きく報じられ、フィナンシャル・タイムズ(FT)、ニューヨーク・タイムズ、ロイター等からも、中国に続き日本もEUと同調する動きを見せたと歓迎する論調の記事を大きく出した。世界経済フォーラム(WEF)も、投資家が今回の発表を歓迎していると報じた。
所信表明演説では他には、最大で200万円の持続化給付金や4000万円の無利子・無担保融資等の対策、行政のデジタル化、テレワークやワーケーションなど新しい働き方の推進、農産品の海外輸出強化や、海外からの金融人材の受け入れ、政府ファンドを通じ大企業退職者を地方の金融機関へ紹介する取り組み、企業での男性育児休暇取得の促進、不妊治療への保険適用、子どもの貧困対策、中国との安定した関係、健全な日韓関係、安保理改革を含む国連改革や、WHO、WTO改革などを挙げた。
【参照ページ】【全文】菅首相 所信表明演説
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