世界経済フォーラム(WEF)は11月11日、航空機燃料をゼロ・エミッションにする道筋を示したレポートを発表した。マッキンゼーが作成に協力した。水素を燃料とする航空機の開発まで数十年が必要とされる中、複数の持続可能なジェット燃料(SAF)のオプションを検討。コスト障壁さえクリアできれば、世界の全フライトを100%SAFで航空することは可能との見方を示した。
世界系経済フォーラムは、航空での脱炭素化のためのイニシアチブ「Clean Skies for Tomorrow Initiative」を運営しており、80社以上が加盟している。ステアリングコミッティー構成企業は、ボーイング、エアバス、ユナイテッド航空、デルタ航空、インターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)、ルフトハンザ、KLMオランダ航空、エミレーツ航空、スパイスジェット、ロンドン・ヒースロー空港、スキポール空港、ドバイ空港、ロールスロイス、ロイヤル・ダッチ・シェル、SkyNRG。加盟企業には、世界各国から有力企業が多数加盟しているが、日本企業の加盟はゼロ。
航空機燃料のゼロ・エミッション化では、電動、燃料電池、水素燃焼等も可能性はあるが、電動や燃料電池は航続距離の問題があり、水素燃焼はまだ技術が確立していない。そのため10年から20年の間は、SAFが低炭素化に向けた有力なオプションとなる。
SAFについては、廃油や油脂廃棄物を加工し合成ケロシンを生成する「HEFA」が現在活用されているが、他にもバイオ・ジェット燃料、廃棄物合成ガス、水素に二酸化炭素を合成し液体燃料を生成する「GtL」の3種類がある。そのうち、HEFAだけでも最大8,500万t、バイオ・ジェット燃料では最大4億500万tを生産する能力がすでにある。今後、新興国での経済発展によりフライト数は増加すると予測されるが、それでも2030年の予測燃料需要は4億700万tであり、そこまではSAFだけでジェット燃料を賄うことが可能と分析した。
しかし現在、SAFの価格は、通常のジェット燃料の約2倍。そのため、活用が進まず、年間のSAF生産量は400万tに留まっている。短期的には、HEFAの生産規模拡大により「規模の経済」でコスト削減することが最優先と語り、そのために大規模な実証プラントの建設が不可欠とした。また2030年から、GtLが最も規模として有望としながらも、グリーン水素を大規模に生産するための再生可能エネルギーの増強が必要。政府による財政支援が有効とした。
同イニシアチブに加盟している重工業世界大手英ロールスロイスは11月12日、次世代ジェット・エンジンの開発では、初めて100%SAFでの実証実験を行うことを表明した。現在のロールスロイスの仕様では、SAFの最大含有比率は50%。これを100%にまで引き上げにいく。
【参照ページ】All Aircraft Could Fly on Sustainable Fuel by 2030, Says World Economic Forum Report
【参照ページ】Rolls-Royce to test 100% Sustainable Aviation Fuel in next generation engine demonstrator
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら