国連責任投資原則(PRI)は8月2日、改訂を進めている署名機関の年次報告フレームワークの進捗状況を公表した。PRIは、2021年度の年次報告から、トライアルで改訂したフレームワークでの任意回答を求めつつ、パブリックコメントの募集も行ってきた。
その結果、論点が残っていると判断し、最低履行要件の再検討をすることとした。これにより、新規のフレームワークの導入は当初予定していた2022年度から2023年度に1年延期することを決めた。それに伴い、2022年度の年次報告は中止し、次回の年次報告は2023年度とすることを通知した。これにより、アセットオーナー、運用会社、サービスプライバイダーの全てのカテゴリーの署名機関の2022年度の年次報告が取りやめとなった。
【参考】【国際】PRI、署名機関に対し最低履行要件を設定。ESG投資運用方針制定や経営陣コミットメント等(2018年1月11日)
PRIの今回の改訂は、最低履行基準を大幅に引き上げるとともに、同基準を満たさない署名機関の除名までの期間を2年から1年に短縮するというもの。最低履行基準の引き上げでは、現行では運用資産残高(AUM)の50%以上のESG投資ポリシーを適用することとしているが、90%以上にまで引き上げる。また、AUMの10%以上を占める、もしくはAUMが100億米ドル以上のアセットクラスに対しても、同様にESG投資ポリシーを適用することも義務付ける。さらに、上場株式での議決権行使やエンゲージメントの実施も義務付け、年次報告データに関しては、CEOの署名や、内部監査や外部監査を受けることも必須としている。
(出所)PRI
今回のスケジュール延期の決定により、それまでのスケジュールも変更となる。まず、2021年度の各署名機関の透明性レポートのデータポータルへの非公開掲載を10月に実施。その後4週間が署名機関の確認機関となる。全ての署名機関の確認が取れた後に、透明性レポートと評価レポートを2022年6月までにリリースする。
これに伴い、2021年度の優秀署名機関を表彰する「リーダーズ・グループ」は延期。但し、個人表彰の「PRIアワード」は予定通り実施する。
【参照ページ】Reporting Framework pilot: next steps for signatories
【参照ページ】How investors are assessed on their reporting
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