マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)は8月30日、第4次対日相互審査報告書を公表した。日本政府のマネーロンダリングに対する法規制の状況に関する有効性評価では、全ての項目で最高位の「HE」が取得できなかった。FATFから日本のマネーロンダリングが不十分と酷評された。日本の金融機関に対し、マネーロンダリング対策の強化が求められる形となった。
FTAFは、マネーロンダリング・テロ資金供与対策の国際基準(FATF勧告)を策定し、各国の履行状況について相互審査を行う仕組み。現在、G7を含む37カ国・2地域機関が加盟。その他9つのFATF型地域体を加えると、FATF勧告は、世界205の国・地域に適用されている。日本に対しては、第3次対日相互審査報告書が2008年に発表されて以来、13年ぶりの審査となった。
今回の有効性評価では、11項目で評価された。評価は上位から「HE(高いレベル)」「SE(十分なレベル)」「ME(中程度のレベル)」「LE(低いレベル)」の4段階で判定される。MEとLEは不合格の扱い。
- リスク認識の協調:SE
- 金融機関とDNFBPs(対日相互審査報告書)の監督:SE
- 金融機関とDNFBPs(対日相互審査報告書)の予防措置:ME
- 法人等の悪用防止:ME
- 特定金融機関情報等の活用:ME
- 資金洗浄の捜査・訴追・制裁:SE
- 犯罪収益の没収:ME
- テロ資金の捜査・訴追・制裁:ME
- テロ資金の凍結・NPO:ME
- 大量破壊兵器に関与する者への制裁:ME
また、40ある勧告項目での評価も付与され、遵守が4項目、だいたい遵守が24項目。それ以外の12項目は「一部遵守」や「未遵守」と不合格扱いとなった。このうち、大量破壊兵器の拡散防止等は新規項目で「一部遵守」の評価。また第3次対日相互審査報告書では、相対的に重視されていなかった項目についても、日本政府の対策強化が遅れ、全て不合格だった。
指摘された具体的な内容としては、
- テロ対策の専門家はテロ資金供与リスクを理解しているが、テロ資金供与対策の担当者の理解度が低い
- 大規模でない金融機関においては、マネーロンダリング・テロ資金供与リスクの理解が不十分
- 法執行機関間での政策の策定のための協力・連携が不十分
- 一部のDNFBPsに疑わしい取引の届出義務が課されていない
- テロ資金供与に悪用されるリスクがあるNPO等への理解と対策が未整備
- 法執行機関や独立した情報源から得られる追加の情報を活用すること、脅威や脆弱性へのフォーカスを増やすことを含め、国のリスク評価やその他の評価が不十分
- 暗号資産分野に関する監督が不十分
- 実質的支配者情報の情報把握状況が不十分
- 法執行機関は、被疑者の資産を特定し、被疑者間のつながりを理解するために金融情報を活用する傾向にあるが、資産の追跡のための活用は弱い
- 国境を越えた又は国内での薬物の違法取引の大規模なマネロン事案の捜査に大きな課題
- 国境を越えた現金密輸リスクに対し、虚偽又は無申告での現金の国境を越えた移動が防げていない
- テロ資金提供処罰法の不備。起訴に億劫な姿勢のせいで、抑止力を欠いている
今回の結果を受け、日本政府は、「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」を設置。警察庁と財務省が議長となり、金融庁、法務省、外務省が幹事、その他、各省庁が構成員として加わり、対策強化を進めることを発表した。
【参照ページ】FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書の公表について
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