国連食糧農業機関(FAO)は9月8日、気候変動緩和の一つの手段である「土壌有機炭素(SOC)」について、世界各国の土壌有機炭素ポテンシャルを可視化した初のツール「GSOCseq」をリリースした。2011年にFAOが発足した「食料安全保障と気候変動緩和・適応のためのグローバル・ソイル・パートナーシップ(GSP)」の2021年の総会が9月8日から10日まで開催され、その場で採択された。
炭素隔離とは、大気中の二酸化炭素を土壌有機炭素(SOC)の形で吸収・固定することを指し、土壌中の二酸化炭素を確保することは、大気中の二酸化炭素排出量の削減につながる。また、炭素を多く含む土壌は健康で肥沃であるため、作物の収量にもプラスの効果を与える。しかし一方で、世界の土壌の3分の1は劣化状態にあり、すでに78Gtもの炭素が大気中に放出してしまっている。
今回FAOが発表したGSOCseqは、GSPの「RECSOIL(世界農業土壌再炭素化)」イニシアチブから生み出されたもので、国別にSOC吸収能力を世界規模で推定した初の成果物。同マップでは、様々なデータから、初期のSOCストックや、持続可能な土壌管理や通常の事業活動を行った場合のSOCストックの予測値、各シナリオにおける相対的なSOC吸収率等、重要なデータを可視化した。同マップによると、土壌が持続可能に管理された場合、年間で最大2.05Gtの炭素を土壌に吸収できる。これは農業による世界の二酸化炭素排出量の34%に匹敵する。
FAOは今回同時に、炭素隔離に方法について、農家向けの技術マニュアルも発行。世界中から400人以上の専門家が3年の歳月をかけて作り上げた。様々な環境や土地利用においてSOC含有量に与える影響について、科学的データに裏付けられた優れた土壌管理方法を紹介している。
さらにFAOは9月7日、「特別農産物のグリーン開発に関するグローバルアクション」プログラムを開始。別称は「一国一品の優先製品(OCOP)」と名付けられた。特別農産物(SAP)とは、地理的な場所や文化的な遺産に関連した独特の品質や特殊性を持つ作物。主要穀物と比べて、農業支援の対象となることが少ないが、持続可能にしていくことで、文化、社会、健康、農家の所得の面で大きなプラスの効果が期待できる。
同プログラムは、生産システムの最適化、作物収量と生物多様性の損失の最小化、食品ロス、食品廃棄物、農薬使用の最小化、総合的な農業利益の最大化を目的としている。まずは各国が一つのSAPを特定し、持続可能にしていくアクションを提唱した。
【参照ページ】FAO launches practical tools to encourage soil organic carbon sequestration
【参照ページ】FAO launches Global Action on One Country One Priority Product
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