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【国際】国連生物多様性条約、ポスト2020年枠組みの議論大詰め。企業の行動目標も設定へ

 国連生物多様性条約締約国会議(CBD COP)は3月29日、第24回科学的・技術的助言に関する補助機関会合(SBS24)、第3回実施に関する補助機関会合(SBI3)、ポスト2020年生物多様性世界フレームワークに関するオープンエンド・ワーキンググループの第3回(WG2020-3)再開会合が終了。エリザベス・マルマ・ムレマ事務局長がジュネーブで開催された15日間の会合の結果を総括した。

 生物多様性条約締約国会議は、6月に第4回作業部会を開催した後、2022年内に中国・昆明で行われる第15回国連生物多様性会議(CBD COP15)第2部の場で、ポスト2020年生物多様性世界フレームワークを採択される計画。

【参考】【国際】生物多様性条約締約国会議ハイレベル会合、昆明宣言を採択。金融機関のコミットも確認(2021年10月14日)
【参考】【国際】生物多様性条約締約国会議、中国が260億円の基金創設。日本は18億円の追加拠出表明(2021年10月13日)

 CBD COPは2021年7月、ポスト2020年生物多様性世界フレームワークに関するオープンエンド・ワーキンググループ(WG2020-3)の第3回会合を開催し、ポスト2020年生物多様性世界フレームワークの草案を発表。今回の会合が、オンラインではないリアルでの初会合となった。

 ポスト2020年生物多様性世界フレームワークの草案では、「セオリー・オブ・チェンジ」を中核のコンセプトとし、到達目標に対する課題の特定と効果的に介入すべきポイントを定めることに重点を置いている。

 まず、長期ゴールとなる「2050年目標」では、4つの大項目を小項目に分解して目標を規定している。

目標A

すべての生態系の完全性が強化され、自然生態系の面積、コネクティビティ、完全性が少なくとも15%増加し、すべての種の健全でレジリエントな個体群が維持され、絶滅の割合が少なくとも10倍低減し、すべての分類群および機能群にわたって種の絶滅のリスクが半減し、野生種及び家畜化された種の遺伝的多様性が保護され、すべての種において少なくとも90%の遺伝的多様性が維持されている。

  • マイルストーンA.1:自然システムの面積、コネクティビティ及び完全性において、少なくとも5%の純増を達成する
  • マイルストーンA.2:絶滅率上昇を阻止又は逆転させ、絶滅リスクを少なくとも10%低減し、絶滅の恐れがある種の割合を減少させ、種の集団の存在量及び分布を強化又は少なくとも維持する
  • マイルストーンA.3:野生種及び家畜化された種の遺伝的多様性が保護され、少なくとも90%の遺伝的多様性が維持されている種の割合が増加する

目標B

すべての人の利益のために、グローバル開発アジェンダを支援する自然保護と持続可能な消費を通じ、人間に対する自然の貢献を評価、維持、強化する。

  • マイルストーンB.1:自然と、その人間への貢献が十分に説明され、関連するすべての公共および民間の意思決定に反映される
  • マイルストーンB.2:自然の人間への貢献の全てのカテゴリーについて、長期的な持続可能性が確保され、現在衰退しているものは回復され、関連する各持続可能な開発目標に貢献する

目標C

遺伝資源の利用から得られる利益を公正かつ衡平に配分し、生物多様性の保全と持続可能な利用を含め、金銭的および非金銭的な利益の配分を大幅に増加させる。

  • マイルストーンC.1:伝統的知識の保有者を含む提供者が受け取る金銭的利益の割合が増加している
  • マイルストーンC.2:伝統的知識の保有者を含む提供者の研究開発への参加等、非金銭的利益が増加している

目標D

2050年ビジョン達成のために必要な資金やその他の実施手段とのギャップを解消する。

  • マイルストーンD.1:枠組みを実施するための十分な財源が利用可能かつ配分され、2030年までに少なくとも年間7,000億米ドルまで段階的に資金ギャップを縮小する
  • マイルストーンD.2:2030年までの枠組みを実施するためのキャパシティ・ビルディング及び開発、技術・科学協力、技術移転を含む適切な他の手段が利用可能であり、かつ展開される
  • マイルストーンD.3:2030年から2040年までの十分な資金及びその他の資源が、2030年までに計画又は約束されている

 また、ポスト2020年生物多様性世界フレームワークの直接的な目標としては、2030年行動目標を定める。草案の内容は21の行動目標で構成されている。

  • ターゲット1:地球上のすべての陸地と海域が、生物多様性を考慮した統合的な空間計画の下にあり、土地と海の利用変化に対処し、既存の原生地域を保持することを確実にする
  • ターゲット2:劣化した淡水・海洋・陸上生態系の少なくとも20%を再生し、生態系間のコネクティビティを確保し、優先的な生態系に焦点を当てる。
  • ターゲット3:陸域と海域、特に生物多様性とその人間への貢献が特に重要な地域の少なくとも30%が、効果的かつ公平に管理され、生態代表的で、コネクティビティが十分確保され保護区やその他の効果的なシステムを通じて保全され、地域に根ざした保全策を講じ、より広い景観と海景に統合されるようにする
  • ターゲット4:人工飼育を含め、野生種と家畜化された種の再生と遺伝的多様性の保全を可能にする積極的な管理行動を確保し、人間と野生生物の衝突を回避または減少させるため、人間と野生生物の相互作用を効果的に管理する
  • ターゲット5:野生種の伐採、取引、利用が、持続可能で合法的かつ人間の健康にとって安全なものであることを確保する
  • ターゲット6:侵略的外来種の侵入経路を管理し、侵入と定着の速度を50%以上防止または低減させる。また、侵略的外来種を管理または根絶し、優先種と優先地に焦点を当て、その影響を排除または減少させる
  • ターゲット7:環境中に失われる栄養素を少なくとも半減し、農薬を少なくとも3分の2に減らし、プラスチック廃棄物の排出をなくす等、あらゆる原因による汚染を、生物多様性と生態系機能及び人の健康を害しないレベルまで低減する
  • ターゲット8:気候変動による生物多様性への影響を最小化し、生態系に基づくアプローチにより緩和と適応に貢献し、世界の二酸化炭素排出量緩和努力に年間10Gt以上寄与し、すべての緩和と適応の努力が生物多様性への負の影響を回避することを確保する
  • ターゲット9:陸域・淡水域・海洋の野生種を持続的に管理し、先住民や地域社会による慣習上の持続可能な利用を保護することにより、人々の栄養、食料安全保障、医薬品、生計等の利益を、特に最も脆弱な人々のために確保する
  • ターゲット10:農業、養殖業、林業のすべての分野で、特に生物多様性の保全と持続可能な利用を通じて、生産システムの生産性と回復力を向上させ、持続可能な方法で管理する
  • ターゲット11:すべての人々のために、大気の質、水の質と量の調節、災害や異常気象からの保護に対する自然の貢献を維持・強化する
  • ターゲット12:都市部や人口密集地において、人間の健康と福祉に配慮した緑地・青地の面積、アクセス、便益を拡大する
  • ターゲット13:遺伝資源へのアクセスを容易にし、遺伝資源および関連する伝統的知識の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を確保するための措置を、世界レベルおよびすべての国において、相互に合意した条件および事前かつ十分な情報に基づく同意を通じて実施する
  • ターゲット14:政府のあらゆるレベル、経済のあらゆるセクターにおいて、生物多様性の価値を方針、規制、計画、開発プロセス、貧困削減戦略、会計、環境への影響の評価に完全に統合し、すべての活動と資金の流れが生物多様性の価値に整合することを確保する
  • ターゲット15:すべての官民の事業者が、生物多様性への依存と影響を地域から地球規模まで評価・報告し、負の影響を少なくとも半減、正の影響を漸増させ、事業にとっての生物多様性関連リスクを低減し、採取・生産手法、調達・サプライチェーン、使用・廃棄の完全な持続可能性に向かって前進する
  • ターゲット16:人々が責任ある選択をすることが奨励・可能になるとともに、文化的嗜好を考慮した関連情報や代替手段を利用できるようにし、食料その他の資源の廃棄や、場合によっては過剰消費を、少なくとも半減させる
  • ターゲット17:バイオテクノロジーが生物多様性や人間の健康に及ぼす潜在的な悪影響を予防、管理、制御するための手段を確立し、そのための能力を強化し、すべての国で実施し、これらの影響のリスクを軽減する
  • ターゲット18:生物多様性に有害なインセンティブを、公正かつ公平な方法で、転換、再目的化、改正または排除し、最も有害なすべての補助金を含め少なくとも年間5,000億米ドル削減し、官民の経済・規制上のインセンティブを含め、生物多様性にプラスまたは中立となるよう確保する
  • ターゲット19:フレームワークの目標とターゲットの野心に応じた必要な需要を満たすため、国家生物多様性資金計画を考慮に入れ、新規、追加、効果的な財源を含め、民間資金の活用、国内資源の動員を増やし、キャパシティ・ビルディング、技術移転、科学協力を強化し、あらゆる財源を少なくとも年間2,000億米ドルに増やし、途上国への国際的な資金フローを少なくとも年間100億米ドル増やす
  • ターゲット20:生物多様性の効果的な管理のための意思決定、モニタリングを可能にし、意識向上、教育、研究の促進により、先住民及び地域社会の伝統的知識、革新及び実践を含む関連知識が、彼らの自由、事前かつ十分な情報に基づく同意を得て、推進されることを確保する
  • ターゲット21:生物多様性に関する意思決定への先住民及び地域住民の衡平かつ効果的な参加を確保し、土地、地域及び資源に関する彼らの権利を尊重するとともに、女性、少女及び若者の参加を確保する

 今回の会合では、2050年目標と2030年ターゲットの合意に向けた加盟国間が議論が行われたが、ムレマ事務局長は「時間が必要」と語り、多くの調整が残されていることを明らかにした。但し、大きな骨格は固まりつつある。

 企業や金融機関に関しては、特に、農業・食糧セクターではターゲット9、10、11が、医薬品セクターではターゲット9、13が、資源採掘
素材セクターではターゲット17、21が、そして全セクターではターゲット14、15が直接的な影響を与える。

【参照ページ】Governments advance negotiations on ambitious global biodiversity framework but require more time
【参照ページ】FIRST DRAFT OF THE POST-2020 GLOBAL BIODIVERSITY FRAMEWORK

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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