気候変動に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(Network for Greening the Financial System;NGFS)」は4月27日、グリーンファイナンス及びトランジションファイナンスにおけるタクソノミーの透明性に関する課題を整理した報告書を発行した。
現在、政府や民間団体の間で、気候変動タクソノミーを策定する慣行が広がっているものの、タクソノミーが乱立し、市場関係者の間で共通の見解が持てていない。グリーンウォッシュのリスクも高まっている。そこで、NGFSは今回、世界的に一貫した情報開示基準を必要であることをあらためて確認し、金融市場を活用してカーボンニュートラル社会を実現するには、同じ志を持つプレーヤーが協力して市場の透明性を高めていく必要があるとした。
具体的な方向性としては、まず。発行体や投資家のグリーンファイナンスやトランジションファイナンスの目的に関する透明性を高めること。特に、タクソノミーは、明確な目的や科学的根拠に基づくカーボンニュートラル目標と結びついたときに、最も効果的となるとした。
次に、複数存在してきたタクソノミー、フレームワーク、原則の比較可能性と相互運用性の促進。基準、目標、方法論に関する共通理解を構築することで、第三者審査での評価の乖離を避けることができるとした。
3つ目は、情報開示と報告制度の収斂。グローバルな開示基準を策定することで、データ・移行計画・投資商品の一貫性、比較可能性、信頼性が確保できるとした。
グリーンファイナンスとトランジションファイナンスの語義では、トランジションファイナンスを、「グリーン」がすぐには実現できない分野の転換期の分野のファイナンスと位置づけている動きがあることにも一定の理解を示した。日本政府のトランジションファイナンスの定義はこれに該当する。NGFSは今回、両者を対立的ではなく、補完関係にあると整理しつつ、両社が判別されるためにも、市場の透明性を高めていくべきとした。
但し、トランジションファイナンスが、グリーンウォッシュの温床になりかねないことに留意すべきとし、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)が用いている国際的に認知されたシナリオをベースに、トランジションタクソノミーを策定する必要があるとした。また、トランジションファイナンスがグリーンウォッシュにならないためにも、活動単位ではなく、発行体単位でのタクソノミー適用が重要とした。
新興国でのタクソノミーに関しても、劇的ではなく、秩序だったジャストトランジション(公正な移行)が重要ということを確認。中国、ロシア、バングラデシュ、シンガポールの各政府が策定したタクソノミーは、この観点から評価できるとした。但し、政策の道具にしてはならず、まず気候変動に関する明確で適切な政策を掲げた上で、その政策に従ったタクソノミーを確立すべきとした。また、こちらでも各地域のタクソノミーの調整の必要性を指摘した。
中央銀行のタクソノミー活用では、アセットオーナーとしての中央銀行の役割と、市場監督機関としての中央銀行の役割の双方から方向性を整理。アンケート調査結果から、各中央銀行が活用しているタクソノミーは共通性がなく、ここにもタクソノミーの収斂の必要性を指摘した。また、中央銀行がアセットオーナーとして運用する資産についても、第三者評価を受けることを促した。但し、第三者評価を実施する民間機関の監督を強化すべきとした。
【参照ページ】NGFS publishes a report on enhancing market transparency in green and transition finance
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