岸田首相は5月5日、英ロンドンのシティ・オブ・ロンドン市庁舎「ギルドホール」で日本語で約1時間スピーチした。その中で、「Invest in Kishida」「資産所得倍増計画」を打ち出した。
今回のスピーチでは、自身の経済政策の俗称「新しい資本主義」を紹介したいと切り出し、「メッセージは一つ」「安心して日本に投資してほしい」「Invest in Kishida」と話した。地政学的リスク、サプライチェーンの混乱や、エネルギーの供給や調達の在り方が想像しない形で変わる不安定な時代に、「日本の安定性が強みになる」と語った。これからも日本経済は力強く成長を続けると主張した。
新たに岸田内閣が進める分野としては、「人への投資」「科学技術・イノベーションへの投資」「スタートアップ投資」「グリーン・デジタルへの投資」を4つの柱とした。人への投資では、生産性向上と賃上げ税制の導入をフローの改善、兼業・副業の推進とリスキリングをストックの改善とした。
さらに、「人への投資」の文脈で、「貯蓄から投資」を提唱し、投資による資産所得倍増が重要とした。そのため、少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充や、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設等の政策を総動員するとした。
科学技術・イノベーションでは、人工知能(AI)、量子、バイオ、デジタル、脱炭素の5領域で国家戦略を明示し、国家が呼び水となって企業の投資を引き出すとした。
スタートアップ投資では、「戦後に次ぐ第2の創業ブームを日本で起こす」と述べ、海外の一流大学の誘致を含めたスタートアップキャンパスの創設、スタートアップへのSBIR制度の抜本拡充、海外のベンチャーキャピタル(VC)の誘致と海外VCへの公的資本の参加、個人金融資産及び年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)等の長期運用資金のベンチャー投資への循環、スタートアップの成長を図るためのストックオプション等の環境整備を、一体的に進めるとした。
グリーン・デジタルへの投資では、「再生可能エネルギーに加え、安全を確保した原子炉の有効活用を図る」とし、原子力発電所重視を掲げた。それに向け、2030年に17兆円、今後10年間で官民協調により150兆円の新たな関連投資を実現すると標榜。日本には2000兆円の金融資産、320兆円の企業内部の現預金があり、達成は可能とした。また、成長志向型カーボンプライシングと、規制・支援一体型投資促進策の2つのイニシアチブで構成されるの包括的政策ロードマップを早急に策定するとした。
デジタルでは、官民双方でデジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に推進し、ブロックチェーンやNFT、メタバース等のweb3.0を推進する環境整備を含め、新たなサービスが生まれやすい社会を実現するとした。
さらに、強固なマクロ経済フレームワークを構築するための改革として、政府の予算単年度主義を打破を唱えた。大胆な金融政策と機動的な財政政策も繰り出すとした。
一方、海外メディアは、今回の岸田首相のスピーチを冷やかにみている。英紙フィナンシャル・タイムズや米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、今回の岸田首相のスピーチを現在まで一切報じていない。
現地大手メディアBBCは、スピーチ後の日英首脳会談で、2021年10月に交渉を開始した日英円滑化協定が今般大枠合意に至り、同協定が自衛隊と英国軍の共同運用・演習の円滑化を通じ日英安全保障・防衛協力をさらに深化させることで一致したことは報じたが、スピーチには触れていない。
英通信ロイターは、岸田首相のスピーチに関し、労働力不足等の課題に日本経済が直面していることを認め、日本企業はより多様化する必要があると述べたと伝えたことを強調。デジタルグリーン、スタートアップ投資については触れていない。
【参照ページ】ギルドホールにおける岸田総理基調講演
【画像】内閣広報室
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