世界貿易機関(WTO)は6月12月から17日、ジュネーブで第12回閣僚会議(MC12)を開催。7つの協定・宣言文書を採択し閉幕した。WTOは全会一致を原則としており、加盟国全体で数年ぶりに合意に達した。会期は当初予定より1日延長され、ギリギリの攻防となった。
今回の合意の焦点は、全部で3つ。まず、過去2年普及してきた発展途上国が新型コロナウイルス感染症ワクチンを製造・輸出できるようにするための知的財産権の一部免除に関する合意。そして、WTO史上始めて合意に達した漁業補助金の抑制。3つ目が、Eコマース関税の暫定停止措置の継続と今後の集中議論へのコミット。
ワクチンに関しては、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)の下で、全ての発展途上国は、行政命令等により、権利者の同意なしに、新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造及び供給・輸出を実施できる権利が認められた。但し、ワクチンへの公平なアクセスを目的としているため、再輸出や転用等を防止する努力義務が課せられる。供給価格に関しては、人道的かつ非営利的な目的を考慮することを促した。また、透明性確保のため、同措置を採った場合は、速やかにTRIPS理事会に伝達することでも合意した。同規定の適用期間は5年とし、運用は毎年見直す。さらに、6ヶ月以内に、診断薬と治療薬の扱いも決定する予定。
漁業補助金に関しては、違法、無報告及び無規制(IUU)を支援する一切の漁業補助金付与を禁止する初の国際協定が採択された。今後、各加盟国の受諾作業に入る。留保をつけることはできない。取締対象のIUU漁船の管轄権は、自国領域内の漁船、自国船籍国の漁船、地域漁業管理機関等の取極めによる自国権限下にある漁船と特定した。
IUU漁業に関しては、沿岸国や地域漁業管理機関が、入手可能な最善の科学的根拠に基づく、ある水産資源が乱獲されていると判断された場合、補助金付与が禁止となる。但し、生物学的に持続可能な水準まで資源を回復させるための補助金は認められる。当該規定は、発展途上国に関しては、発効日から2年間は免除される。
IUU漁業が不確かな場合にも、推定無罪とはならず、補助金支給では相当な注意を払うことも規定された。最終判断が出る前に、加盟国により違反の疑いが欠けられた場合にも、当該加盟国が、補助金支給国に対し通知することが求められる。
今回の会合では、発展途上国の扱いの議論に多くの時間が割かれた。MC12の最終成果文書でも、特に新型コロナウイルス・パンデミックで発展途上国の経済が大きな打撃を受けたことを背景に、貿易が、生活水準の向上、完全雇用の確保、加盟国の持続可能な開発の追求、経済発展のニーズと関心に合致した形で実施されることを確保するよう求めた。機能不全に陥っているWTO紛争解決制度に関しても、2024年までに正常化できるよう議論を進めることで合意した。
加えて、今回の会合では、食料安全保障も大きな争点となった。特に世界全体での食糧危機への懸念が増す中、国内向けの食料確保と、海外への食料供給をどのようにバランスをとるかが難しい議論となっている。今回の合意では、世界食糧計画(WFP)を中心とした食糧援助を拡大し、食糧危機に陥っている加盟国を支援する体制を強化することでも一致しつつも、国内食糧確保を考慮することが常に付言されている。食糧人道支援については、輸出禁止をしないことでも一致したが、こちらでも国内食糧確保の考慮が留保された。
【参照ページ】WTO members secure unprecedented package of trade outcomes at MC12
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