国際通貨基金(IMF)は9月30日、現在、3億4,500万人が深刻な食糧不足状態に、8億2,800万人が食糧不足状態にあると発表。食糧不安は2018年以降に高まっており、ウクライナ戦争以前から悪化していることを強調した。対策として気候変動対策と貿易自由化の促進をあげた。
今回の発表では、食料不安の原因は、もともと、2018年から気候変動と地域紛争で悪化していたところから、新型コロナウイルス・パンデミックの影響が加わり深刻さが増加。それに加えて、ウクライナ戦争でさらに悪化した形。ロシアとウクライナからの食料輸入に依存していた国々は、ほとんどが後進国で、さらに食糧や肥料の輸入コスト上昇により、2022年と2023年はさらに国際収支が90億米ドル悪化する見通し。
そこで、今回、国際社会に向け、対策として4つを呼びかけた。まず第一に、人道的支援の実施。特にインフレ対策と最も弱い立場の人々の保護を優先させるべきとした。すでに、ジブチ、ホンジュラス、シエラレオネが最近、貧困層への緊急食料援助や現金給付の提供を発表しており、これらの政策を国際社会全体で支援すべきとした。
2つ目が、貿易自由化を堅持することによりる輸出禁止措置の早急な段階的廃止。すでに廃止の方向性は、黒海穀物イニシアテチブや世界貿易機関(WTO)第12回閣僚会議でも確認されているが、依然として食糧生産国の保護主義的な措置が続いている。
3つ目が、肥料への十分なアクセス確保と作物の多様化による食糧増産。貿易金融を増やし、サプライチェーンを強化すべきとした。
4つ目が、気候レジリエントな農業への投資。特にサハラ以南のアフリカ諸国は、気候変動の影響に直面する準備が最も遅れており、作物の新品種への投資、水マネジメントの改善、情報の普及等、低コストで効果の高い対策に重点を置くべきとした。具体例として、エチオピア、ケニア、ルワンダでは、モバイル技術を活用して農民に降雨予測を提供し、作物の植付や作物保険の加入を最適化していることを好事例とした。
IMFは今回、世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)が資金を確保できるようにすべきと表明した。さらに緊急支援や債務救済への支援を各国政府や国際機関に提唱。IMFとしても追加の支援策として、緊急融資制度を活用した各国政府への資金供給を理事会で承認する考え。
IMFの発表では、後進48ヶ国の国際収支の悪化90億米ドル以外にも、食料不足に陥っている人々への支援に50億米ドルから70億米ドルが必要と試算。加えて、2022年の深刻な食糧不足の人々を救済するには、約500億米ドルが必要とした。さらに今後、慢性的な食糧不足や食糧事情の悪化により、コストは増大していくおそれがあるとも言及した。
【参照ページ】Global Food Crisis Demands Support For People, Open Trade, Bigger Local Harvests
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