国連ハイレベル気候チャンピオンは9月28日、沿岸都市の気候変動レジリエンスを強化するための投資アプローチをまとめた報告書「Blue-Tinted White Paper, Investment Protocol」を発表した。沿岸都市関係機関も執筆に参画。公共投資も含めて提言がまとめられた。
今回のレポートは、米国でインフレ抑制法が成立し、そのうち26億米ドルが沿岸地域の生態系保全・回復を通じた自然を軸としたソリューション(NbS)型の物理的リスク対策に投じられることが大きな特徴。同レポートは、インフレ抑制を評価しつつも、今後の資金需要には全く不足していることを念頭に執筆された。
同レポートでは、沿岸都市には、世界の人口の大部分が居住しており、文化財、輸送、港湾、エネルギープラント、観光等の経済活動が集中しており、これらの物理的リスクが非常に重要になると指摘。特に、今後世界の沿岸都市136ヶ所が被る平均的な洪水関連損害は、2050年までに年間520億米ドルに上るとの予測も紹介。さらに、今後沿岸都市に人口集中が進むことがからも問題の大きさを浮き彫りにした。
そこで今回のレポートでは、投資意思決定に反映させることを目的に、沿岸都市特有の資金需要を明らかにした。まず、沿岸都市毎に状況の差が大きいため、画一的なソリューションは不可能であり、地域の需要に応じて幅広い対策オプションの中から検討していく必要があるとした。また、都市部の中でも、保護される地域と保護されない弱者地域に分断していくリスクも指摘し、統合を強く促した。
2つ目は、マルチステークホルダー型の対話の話の重要性。特に、直接損害を受ける沿岸地域だけでなく、内陸地域も含めた資金配分が重要となるため、広域行政の重要性を指摘した。
3つ目は、現在だけでなく将来の気候変動を踏まえた気候変動適応策の必要性。投資プロジェクトの時間軸を長く設定する必要があるとした。
4つ目は、低所得地域での対策。低所得地域では民間金融のインセンティブが少ないため、公共投資が特に重要になるとした。構造的な課題としては、低所得国の沿岸都市と国際開発金融機関及び開発金融機関(DFI)の協力関係が整っていないため、資金フローがうまく流れていないことを挙げた。
課題解決の方向性としては、やはり民間ファイナンスを重視。沿岸部のレジリエントの恩恵を予測可能で明確に特定できる収益源に転換する金融メカニズムが存在しないことが、現在の大きな壁とした。今後はその壁を打破する解決策、特にそれらが提供するコベネフィットに価格をつけることが重要であるとした。
同レポートの作成には、国連のRace to Resilience、国連「海洋の10年」プログラムのOcean & Climate Platform、国際NGOのResilient Cities Network。
【参照ページ】Unlocking financial flows for building resilient coastal cities
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