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【国際】「生成AIは雇用破壊ではなく雇用補強」ILO研究発表。但し前提となる政策や労使関係強調

【国際】「生成AIは雇用破壊ではなく雇用補強」ILO研究発表。但し前提となる政策や労使関係強調 1

 国際労働機関(ILO)は8月21日、生成AIは雇用破壊ではなく雇用補強につながるとする研究結果を発表した。

 今回発表したのは、ILO調査部の研究者が執筆した「生成AIと雇用:雇用の量と質に対する潜在的影響のグローバル分析」。Open AIが開発した「GPT-4」をベースに、潜在的なエクスポージャーを職種レベルでスコア化し、自動化される可能性が高い職種と、業務が補強される可能性が高い職種に分類し、雇用効果を推定した。

 結果、自動化エクスポージャーの高い職種は、広範な「事務職」だけであり、事務職の業務の24%が高い影響を、58%が中程度の影響を受けるとした。他の職種では、エクスポージャーの高い業務の割合は多くても1%から4%の間にとどまり、中程度の作業でも25%を超えないことがわかった。そのため、生成AIは、ほとんどの職種に関し、業務を完全代替することはなく、業務を効率化し、他の業務に時間を割くことができるようになる補強効果が高いとの結論が得られた。

 国別の影響の違いでは、自動化エクスポージャーの高い「事務職」の多い高所得国のほうが影響は大きく、高所得国で雇用の5.1%、低所得国では0.4%が影響を受けるという推定結果となった。一方、補強効果エクスポージャーの高い職種の従事者のほうがどの所得国でも圧倒的に多く、低所得国では10.4%、高所得国では13.4%の雇用が補強強化を受けるとした。

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(出所)ILO

 また性別別の影響では、自動化エクスポージャーの高い人はどの所得国でも女性の方が多く、特に所得が上がるほど影響を受ける女性が多くなることがわかった。背景には、経済発展に伴い「事務職」に就く女性が多くなる傾向にあることが関係していると思われる。また、補強強化を受ける割合も、全ての所得国で、女性の方が多いこともわかった。同報告書では、伝統的に女性の雇用を増やす手段として機能してきた事務職が、発展途上国では出現しないかもしれないとコメントしている。

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(出所)ILO

 但し、今回の調査では、自動化と補強の中間に位置する職種が、分析の対象外となっているため、「未知の職種」が多いことにも留意を促した。これらの未知の職種については、自動化もしくは補強の分類に業務そのものが進化していく可能性があるとした。

 また今回の研究では、生成AIの社会普及が世界中で一律に進展することを前提にしているため、高所得国で生成AIの普及が進めば、それに伴い補強効果も高所得国に偏在していくことを意味する。生成AIの恩恵を受けるためには、低所得国でのデジタル教育が非常に重要になる。

 加えて、自動化の影響を受ける職種が女性雇用が多く、新たな性別格差を生み出す可能性もある。そのため、自動化の影響を受ける労働者の移行を管理するための政策と、補強効果の影響を受ける労働者の雇用の質の転換を支援する政策の2つが必要になるとした。

 過去に発生した自動化の影響としては、2010年から2016年を対象としたオランダ労働者の例を紹介し、自動化の結果、余剰人員となった労働者は5年間で累積賃金が年間で9%減ったという。これらの衝撃を吸収するためにも、雇用保険、職業訓練、再就職支援等の制度設計が急がられるとした。同報告書では、ILO158号条約(雇用保護条約)は、技術的理由による集団解雇の場合には十分な労使協議を課す特別要件を課していることを強調した。

 別の懸念としては、従業員のアルゴリズム管理が進み、労働者は、自分の仕事を各自で整理したり、ペースを設定したりする自主性を欠くようになるおそれもあるとした。そのため、変化を迅速に感じるために、職場での従業員との対話がますます重要になるとした。

【参照ページ】Generative AI likely to augment rather than destroy jobs

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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