欧州委員会は10月3日、EUの経済安全保障にとって重要な技術分野に関する勧告を採択した。欧州委員会とEU外務・安全保障政策上級代表が6月に発表した「欧州経済安全保障戦略に関する共同コミュニケーション」に基づく措置。
【参考】【EU】欧州委と上級代表、経済安保戦略発表。リスク評価と経済レジリエンス(2023年6月25日)
同コミュニケーションでは、包括的なリスク評価を実施する分野として、「エネルギー安全保障を含むサプライチェーンのレジリエンスに対するリスク」「重要インフラの物理的セキュリティ及びサイバーセキュリティに関するリスク」「技術セキュリティと技術流出に関するリスク」「経済依存関係を利用した武器化や経済的威圧のリスク」の4つを定めている。今回の発表は、このうち「技術セキュリティと技術流出に関するリスク」に関するもの。
技術セキュリティと技術流出に関するリスクの特定では、3つの観点で分析した。
- 技術の実現性と変革性:パフォーマンスと効率の大幅な向上、分野や能力等の抜本的な変革を促進技術の可能性と関連性
- 民生と軍事の融合リスク:民生と軍事の両分野に関連する技術であり、両分野を発展させる可能性のある技術
- 技術が人権侵害に使用されるリスク:基本的自由の制限等、人権侵害に悪用される可能性のある技術
その結果、具体的に4つの技術分野を特定した。
- 先端半導体技術(マイクロエレクトロニクス、フォトニクス、高周波チップ、半導体製造装置)
- AI技術(高性能コンピューティング、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、データ分析、コンピュータビジョン、言語処理、物体認識)
- 量子テクノロジー(量子コンピューティング、量子暗号、量子通信、量子センシング、量子レーダー)
- バイオテクノロジー(遺伝子組換え技術、新しいゲノム技術、遺伝子駆動技術、合成生物学)
今回の対象技術分野の特定を受け、欧州委員会は、EU加盟国に対し、2023年末までに集団的リスク評価を実施するため欧州委員会に協力するよう勧告した。民間部門との協議や守秘義務の保護等、集団的リスク評価を構成するための指針的原則も盛り込まれている。その後、欧州委員会は、リスクの進展に対する時間的要因も考慮しつつ、さらなるリスク評価の適切なスケジュールと範囲に関し、EU加盟国と対話を実施。2024年春までに、今後の在り方を提示する。
【参照ページ】Commission recommends carrying out risk assessments on four critical technology areas: advanced semiconductors, artificial intelligence, quantum, biotechnologies
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