
EU加盟国閣僚級のEU理事会は6月24日、第14次対ロシア経済制裁パッケージを採択した。69の個人と47の法人を経済制裁対象に加えた他、分野別措置も強化した。
今回の経済制裁では、第三国への積替えを目的とした、EU域内施設でのロシア産液化天然ガス(LNG)の積替えサービスを禁止。猶予期間は9ヶ月間で、船から船への積み替え、船から陸上への積み替え、再積荷作業が全て禁止対象となる。輸入は禁止せず、EUを経由して第三国へ再輸出する場合にのみ禁止となる。さらに、北極圏LNG2やムルマンスクLNG等、建設中のLNGプロジェクトの完成に向けた新規投資や、物品、技術、サービスの提供も禁止した。EUのガスパイプライン網に接続されていない特定のターミナルへのロシア産LNGの輸入も禁止となる。
また、今回初めて、特定の船舶を対象とした入港禁止及びサービス提供禁止の措置も決まった。対象となる船舶は、ロシア向けの軍事装備の輸送、盗まれたウクライナ穀物の輸送、LNG部品の輸送やLNGの積替え等によるロシアのエネルギー部門の開発支援等を理由とし、個別に指定する運用となる。今回は27隻が対象となった。
航空機のEU域内領空飛行禁止も改題された。非定期便を対象に、EU域内への着陸、EU域内からの離陸、EU域内への上空飛行が禁止となる。また、ロシアの自然人または法人、団体、組織が、休暇目的地や商談目的地に到着するために離着陸の場所や時間を効果的に決定できる立場にある航空機も禁止対象となる。航空会社は、航空機の所有権や乗客の情報を含め、非定期便に関してEU加盟国の所轄官庁が要求するあらゆる情報を提供しなければならない。さらに、ロシアの自然人または法人が25%以上を所有するEU事業者を対象とし、トランジットを含むEU域内の物品陸上輸送も禁止された。
ロシアの経済制裁迂回行動に対しても規制を強化した。まず、EUの親会社は、第三国の子会社が制裁が阻止しようとする結果をもたらすいかなる活動にも参加しないようにする努力義務が課された。次に、ウクライナで発見された戦略物資の再輸出や、ロシアの軍事システムの開発に不可欠な戦場物資の再輸出に対抗するため、当該戦場物資を第三国に販売するEU事業者は、ロシアへの再輸出のリスクを特定・評価し、軽減するためのデューデリジェンス・メカニズムを導入しなければならない。そして、EU事業者は、戦場物資の製造のための工業ノウハウを第三国の商業パートナーに移転する場合、当該ノウハウがロシア向けの物資に使用されないことを保証する契約条項を盛り込むことが義務化された。
金融面では、ロシア中央銀行が制限措置の影響を回避するために開発した特殊な金融メッセージサービス「金融メッセージ転送システム(SPFS)」の使用を禁止。ロシア国外で活動するEU事業体は、SPFSまたは同等の特殊金融メッセージサービスへの接続が禁止された。さらにEU事業者は、ロシア国外でSPFSを利用して特定の上場企業と取引を行うことも禁止された。
さらに、EU域外に設立された信用・金融機関や暗号資産プロバイダーが、ロシア向けのデュアルユース商品や技術、機密品、戦場物資、銃器、弾薬の輸出、供給、販売、移転、輸送を通じてロシアの防衛産業基盤を支援する取引を促進する場合、当該事業者との取引も禁止となった。
ロシアの軍産複合体を直接支援している61の事業体を新たに取引禁止対象リストに加えた。内訳は、ロシア国内に設立された28法人と、中国、カザフスタン、キルギス、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)等の第三国に設立された33法人。また、マンガン鉱石やレアアースの化合物を含む化学品、プラスチック、掘削機械、モニター、電気機器等のロシアからの輸出に対するさらなる制限を導入すると同時に、ヘリウムの輸入に対するさらなる制限も設定した。
政治資金に関しても、EU域内の政党や財団、シンクタンクを含むNGO、メディアが、ロシア政府またはその代理人から資金提供を受け入れることも禁止した。但し、EU基本権憲章に則り、メディア及びそのスタッフが、EU域内で調査や取材等の活動を行うことは妨げない。
ロシア国民及びロシア企業が、特定の知的財産権をEUで登録申請することにも制限を課した。また、制裁措置の実施や収用によってEU事業者が損害を受けた場合に、原因となったロシア企業に損害賠償請求できるようにする措置も導入された。仲裁や裁判の権限に干渉した法人を取引禁止の対象とすることができる制度も設けた。
【参照ページ】Russia’s war of aggression against Ukraine: comprehensive EU’s 14th package of sanctions cracks down on circumvention and adopts energy measures
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