
国際グリーンボンド基準策定NGO気候債券イニシアチブ(CBI)は7月11日、中国河北省政府が2023年12月に策定した「河北省製鉄業トランジションファイナンス・ガイダンス2023年-2024年版」を高く評価する声明を発表した。
河北省は、中国での製鉄の中心地。世界の鉄鋼生産量の11%を占めている。中国の製鉄所は、2030年までに約80%が設備寿命を迎え、新たな設備投資が必要となっている。
河北省政府は、トランジションファイナンスを、「明確かつダイナミックな技術基準に基づき、高排出産業のグリーン・低炭素への移行に特化した金融サービス」と定義。同ガイダンスは、河北省の製鉄業に対するトランジションファイナンスの範囲と業務展開プロセスを規定し、金融機関がトランジションファイナンスを行うための土台を提供するものとしている。
同ガイダンスでは、製鉄企業は、科学的で明確な短期(2025年)・中期(2030年)・長期(2060年)の温室効果ガス排出量削減目標と行動指針を策定し、エネルギー消費量の総量と、原単位排出量で効果を測定すべきとした。また、既存の低炭素排出技術に依存し、設備投資を続けることで排出が継続してしまう「カーボン・ロックイン」を避けるべきとも明記。また、温室効果ガス排出量削減以外の環境目標に「著しい損害を与えない」とする、EUで採用されているDNSH原則も盛り込んだ。さらに、最低限の社会的セーフガードと公正な移行(ジャスト・トランジション)を満たすことも掲げ、こちらもEUの社会的セーフガード措置を組み入れた。その上で、削減目 標、技術パスウェイ、プロジェクト構成、スケジュールを含む、今後3年から5年の包括的な温室効果ガス排出削減計画を策定するよう求めた。
さらに製鉄業トランジションファイナンスでは、金融機関に関連データを提供し、データの第三者保証も受けるべきと明記した。鉄を使用するサプライチェーン川下企業に対しては、排出量の少ない鉄鋼製品を調達したことを証明する必要があるとした。
トランジションファイナンスで資金を調達した企業には、年1回以上の情報開示を金融機関に対して行い、環境違反の有無、低炭素転換プログラムの実施状況、トランジションファイナンスの利用状況、トランジションの効果、主要業績指標の達成状況、第三者機関のモニタリング調査・評価意見等の情報も含めるべきとした。金融機関は、環境違反の有無や、削減効果に、資金調達コストを連動させるべきとした。
その上で、同ガイダンスでは、トランジションファイナンスの対象となる技術領域についても、176個列挙している。
CBIは、同ガイダンスについて、CBIのトランジション・ファイナンスの考え方に則っており、国際基準に沿ったガイダンスは、投資家の信頼を獲得し、中国のトランジションファイナンス市場を魅力的にすると高く評価した。
中国では現在、中国人民銀行が主導する形で、電力、鉄鋼、建設・建材、農業のトランジションファイナンス・ガイドラインの策定が進められている。また、すでに8つの省・市で、アパレル、石油化学、鉄鋼等の高排出セクターでのトランジションファイナンス・ガイダンスの策定も進められている。
【参照ページ】A green steel decade for China: Hebei province’s new transition finance guidelines are great!
【参照ページ】河北省钢铁行业转型金融工作指引(2023—2024年版)
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