英ESG投資推進NGOのShareActionは1月31日、債券投資家に気候変動を中心としたESGリスクへの考慮を促すレポートを発表した。同NGOが欧米の債券機関投資家22社にインタビューをしたところ、債券発行体の気候変動対応欠如を理由にアクションを起こすことについて、大半の機関投資家が複数の理由で躊躇っていることがわかった。
今回のインタビュー対象は、運用会社5社、投資コンサルタント5社、年金基金・保険会社4社、慈善団体4社、政府系投資機関2社、債券発行体2社の合計22社。地域別では、英国15社、ドイツ4社、ノルウェー、スウェーデン、米国が1社ずつ。
債券投資家は、株式投資家と違って、株主の権利のように明確なオーナーシップがないため、発行体に対しての影響力を及ぼしにくいと言われている。しかし、債券投資家が既発債のダイベストメントを実施したり、リファイナンスのための新発債への投資を拒否するようになれば、発行体に大きな影響力を及ぼすとも考えられる。今回のインタビューでは、債券投資家が、ダイベストメントやリファイナンス債券投資拒否は、発行体に大きな影響を行使しうるという考えではほぼ一致。発行体へのエンゲージメントでも、株式投資チームと債券投資チームが連携して実施している機関投資家も増えていた。しかし、気候変動へのアクションを躊躇させる理由について、債券投資家という法的なオーナーシップの欠如と答えた人は少数にとどまり、他の理由が多数上がった。
同レポートによると、他の理由については、まず、発行体の気候変動アクションに対するデータが不完全なことを挙げた。また、特定のセクターの債券を投資対象から除外することについては、リターンへの影響に関する懸念があるいう声もあった。しかし、どのような影響かを明確に答えられる機関投資家はどこもなく、なんとなくの不安を感じているという。
加えて、債券投資家間の集団的エンゲージメントについては、法的制約、効果性、パブリシティの3つの点で懸念があがった。法的制約では、共同議決権行使に関する法規制、競争法上のルール、EU市場濫用規則(MAR)上の相場操縦規制の3つがあがった。効果性では、集団のほうが発行体に影響を及ぼせるという意見と、1体1のほうがよいという意見の双方が出た。パブリシティでは、政治的な活動を思われるリスクや、評判のよくないパートナーと組むことのレピュテーションリスクの声があがった。
グリーンボンドについては、通常債券とバリュエーション面で差がなければ購入したいという声がほとんどだった。また、グリーンボンドにより透明性が高まることについては多くの投資家が歓迎したが、グリーンボンドの目的に関して十分に理解していない投資家もいた。太陽光発電所やエコカー・ローンを原資産とした資産担保証券等のグリーン証券化について法律面での障害を指摘する声もあった。
これに対し、ShareActionは、債券投資の受益者の利益を勘案すると、債券投資家が気候変動の点で積極的に行動しないことはフィデューシャリー・デューティー(議決権行使)の面からも問題があると指摘。データ不足は、金融市場の常であり、行動しない理由にはならないとした。また、法的課題については、金融当局に対し改善を促した。
ダイベストメントや集団的エンゲージメントについては、株式市場では議論が進み、大きな動きになってきている。この議論が、今後債券投資家についても盛り上がっていきそうだ。
【参照ページ】Bondholders must start playing hardball with climate offenders
【レポート】Sleeping Giants: Are Bond Investors Ready to Act on Climate Change?
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