今回ご紹介するのは、ドイツに本拠を置きグローバルで40,000人以上の従業員を抱えるスポーツ用品メーカー、Adidas AG(アディダス・グループ)のサステナビリティへの取り組み。アディダスは言わずと知れた世界を代表するスポーツ用品メーカーの一つだが、同社はサステナビリティ分野における先進企業としても知られている。
2014年にはカナダのCorporate Knights社が発表している"Global 100 Most Sustainable Corporations in the World"ではじめてTOP10入り(8位)を果たしており、その他にもDJSI(Dow Jones Sustainability Indices)やFTSE4GOOD INDEXなど主要なインデックスにも連続して選出されているなど、外部からの評価も高い。
アディダスのサステナビリティ戦略は、Performance、Passion、Integrity、Diversityという同社の4つのコーポレートバリューに根差している。そのバリューを実現し、強固なブランドを築くための戦略として、同社は下記4つの柱を掲げている。
- Products:製造工程の効率化や持続可能な素材の積極的な活用、イノベーションを通じて、よりよい製造方法を追求する。
- People:自社の従業員、工場労働者、ビジネスを展開しているコミュニティの住民に対してポジティブな影響をもたらす。
- Planet:自社のオペレーションとサプライヤー工場の双方において環境負荷を削減する。
- Partnership:重要なステークホルダーと積極的に関わり、業界をよくするためにパートナーと協力する。
ここでは、動画の内容に沿って上記4つの柱の取り組みについてご紹介していく。
アディダスのサステナビリティ戦略を支える4つの「P」
Products
製品のサステナビリティに関するアディダスの取り組みは画期的な製造技術開発から製造工程の効率化、持続可能な素材の利用、持続可能なパッケージにいたるまで幅広いが、その中心となっているのが製品開発におけるサステナビリティ・イノベーションだ。
アディダスの創業者、Adi Dassler氏が生んだ製品づくりにおける原則は"to make athletes better."というとてもシンプルなものだが、その原則を実現するためのイノベーションが、同社のサステナブルな製品開発にとっても核となっている。
たとえば、より薄く、より軽い素材を利用することはアスリートのパフォーマンス向上だけではなく資源の浪費やカーボン排出量の削減につながるように、サステナビリティの観点からイノベーションに取り組むことが、結果としてアスリート(消費者)にとっても優れた製品を作ることにつながるのだ。
その一つの例として動画でも紹介されているのが、アディダスが2012年に発表したドライダイ製品だ。ドライダイ(乾式色染)とは水を使わずに繊維を染色することができる技術で、染色工程における水利用が0%になるだけでなく、従来の伝統的な染色方法よりも50%以上の化学物質とエネルギー使用を削減できるという。また、同社では2018年までに持続可能なコットンの使用率を100%にすることをコミットしている。
People
「人」に関する分野は、アディダスがもっとも力を入れて取り組んでいるテーマの一つだ。動画の中で紹介されているのが、2012年に始めたサプライヤー工場の労働環境改善のための取り組みだ。アディダスは、サプライヤー工場で働く労働者が、自身の権利が侵害されていると感じたときに匿名で職場の問題や不満をテキストで共有できるショートメッセージサービスを用意した。これは、サプライヤーの労働環境改善はもちろん、問題が大きくなる前のリスクマネジメントとしても機能している。
また、従業員に対する手厚い取り組みも有名だ。同社は従業員をもっとも重要な財産だと考えており、ダイバーシティの促進、ワークライフバランスの支援、継続的なトレーニングなど幅広い領域でプログラムを展開している。ボランティアやコミュニティプログラムへの参加支援にも積極的だ。下記の動画は、アディダス社の従業員がそれぞれ自身の言葉で「サステナビリティ」について語っている動画だ。同社の従業員に対して「サステナビリティ」の概念が広く浸透していることがよく分かる。
Planet
アディダスは自社のバリューチェーン全体における環境負荷削減に積極的に取り組んでおり、2010年には、2015年までに環境フットプリントを15%削減するというEnvironmental Strategy 2015を掲げている。環境への取り組みの具体例の一つとして挙げられているのが"Green Company"というイニシアティブだ。
Green Companyは2008年に始まった環境イニシアティブで、同社のオフィスや製造拠点、配送センターにおける環境パフォーマンスの改善を目的とするプログラムで、エネルギー、水利用、紙の使用量、二酸化炭素排出量など幅広い領域において高い目標が掲げられている。また、これらの取り組みはGreen Company Performance Analysisというレポートで毎年進捗状況の報告を行っている。
Partnership
アディダスは、自社における取り組み以外にも様々な外部のステークホルダーとパートナーシップを結び、業界全体のサステナビリティ向上に取り組んでいる。数多くの業界団体に参加しているだけではなく、国際機関やNGOなどとの連携も積極的に行っている。
もちろんスポーツイベントへの協賛においても社会的責任を重視しており、たとえば2014年ブラジルワールドカップの開催にあたっては、地元のパートナーと提携して"Ginga Social"イニシアティブという7歳?17歳までの子供たちに対するスポーツを通じた教育プログラムを展開するなど、草の根のコミュニティプロジェクトへの支援も実施している。
サステナビリティへの取り組みは長距離走
上記のように、アディダスは自社のバリューチェーン全体にサステナビリティ戦略を統合し、ステークホルダーと協力しながらサステナビリティ活動を推進することで、アディダスのブランドを単なるスポーツ用品メーカーを越えたサステナブル・ブランドへと引き上げている。
同社は1989年にオゾン層破壊の原因となるフロン類の使用を禁止して以降、これまで20年以上に渡って業界のリーディングカンパニーとしてサステナビリティに取り組んできた。そんなアディダスならではの考えがもっともよく反映されているのが、動画の最後にも出てくる、"We do recognize that the ahead of us is a marathon, not a splint."(我々はここから先の仕事を短距離走ではなく、長距離走だと考えている)という言葉だ。アスリートを支援するスポーツ用品メーカーならではのユニークな表現だ。
サステナビリティへの取り組みの成果は、決してすぐに出るものではない。2014年に同社が"Global 100 Most Sustainable Corporations in the World"で初めてTOP10にランクインするまで、既に同社は20年以上に渡って活動に取り組んできたのだ。
アディダスのようなグローバル企業の取り組みをすぐに真似することは難しいが、同社は上記で挙げた以外にも幅広い分野で先進的な取り組みを行っており、HP上ではそれらの事例や戦略、サステナビリティを推進する組織体制などについても詳しく情報開示されているので、興味がある方はぜひ下記よりHPを見てみてほしい。
【企業サイト】adidas Group
【サステナビリティページ】General Approach
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