オーストラリアの気候変動問題に取り組むNPOのThe Climate Councilが先日公開したレポート"The global renewable energy boom: how Australia is missing out"によると、世界中で再生可能エネルギーの導入が進む中、オーストラリアだけが他の主要先進国に比べて大きく後れをとっている。国内電力消費量の500倍以上の再生可能エネルギーを創出可能な豊富な資源に恵まれているにも関わらず、である。
既に再生可能エネルギーは化石燃料の発電コストと同等かそれ以下になってきているというのが現在の世界的な状況だ。とりわけ風力発電と太陽光発電のコストは今後も急激に下がり続けることが予測されている。
再生可能エネルギーに関連の投資と雇用は、国際的に盛り上がりを見せており、2014年のクリーンエネルギーへの投資額は、中国(32%)、アメリカ(8%)、日本(12%)、ドイツ(3%)、イギリス(3%)の各国で増加している。一方で、オーストラリアでは35%も落ち込んでおり。大規模な再生可能エネルギーへの投資に限定すると実に88%もの減少が見られる。その原因と案っているのが、再生可能エネルギー関連政策に対する先行きの不透明さだ。
レポートで示されている主な傾向は下記の通りだ。
1. オーストラリアは現在世界的潮流に逆行しており、再生可能エネルギーに関連する投資と雇用が急激に落ち込んでいる。
- 2014年のクリーンエネルギー投資額は、複数の国で増加しているが、オーストラリアでは先行き不透明なエネルギー政策により急激に落ち込んでいる。
- 2012年から2013年にかけて、再生可能エネルギー関連の雇用は、世界で80万人増加しており、米国では2014年、太陽光発電関連の雇用は31,000人以上増加(前年比+21.8%)した。多くの国が軒並み雇用を増やす中、オーストラリアでは2013年に13%減少している。
2. 再生可能エネルギーの発展を世界的に加速させているのは、風力発電と太陽光発電の急激なコスト低下である。
- 2009年から2014年にかけて風力発電のコストは14%、太陽光発電のコストは75%、それぞれ世界的に低下した。
- 太陽光発電のコストは今後5年間でさらに45%低下すると予想されており、多くの国において、太陽光発電が最も安価な発電手段となる。
3. 首尾一貫した長期的なエネルギー転換政策を掲げる国は、成長を続けている。
- エネルギー転換について明確で首尾一貫した長期的戦略を持ち、具体的な政策を推進している多くの国では民間投資が活発だ。逆に、不安定で不透明な政策や政策措置の変更は投資の低迷を招く。
- オーストラリアとイタリアでは2014年、政府方針の変更と先行き不安が原因となり再生可能エネルギー関連の投資が縮小した。
4. オーストラリアには再生可能エネルギーを生み出す豊富な資源があるにもかかわらず、政策の不透明さと導入目標値の見直しにより世界的潮流に乗り遅れている。
- オーストラリアは世界で最も日照量の多い国であり、風量も世界トップクラス。これらの資源を活用すれば国内電力消費量の500倍以上の再生可能エネルギーを生み出すことができる。
- オーストラリア政府は再生可能エネルギー導入目標値(RET)を下方修正することを表明しており、議論は現在進行中だが既に投資家からの信用は失われている。
同レポートが示す通り、世界的には政府主導の積極的なエネルギー転換政策と発電コストの低下がドライバーとなり急激に再生可能エネルギーの普及が進んでいるが、太陽光と風力という豊富な資源を持つオーストラリアはその地の利を活かしきれていない。一方で、オーストラリアは世界で15番目に多く温室効果ガスを排出している国でもある。G20の一国として他の先進国と足並みを揃えることができるのか、今後の政策に期待がかかる。
【レポートダウンロード】The global renewable energy boom: how Australia is missing out
【団体サイト】The Climate Council
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