ドイツ連邦環境省は9月6日、気候変動に向けた2050年までの政策骨子を示す「気候変動アクションプラン2050」の最終草案を公表した。最終草案では、ドイツ政府が既に昨年の会議で発表している2050年までの80%から90%の温室効果ガス削減を繰り返し表明しているが、今年6月に発表された前回草案には盛り込まれていたエネルギー源としての石炭利用停止期限などの内容を削除する内容となっており、環境保護団体は計画が骨抜きにされていると批判している。「気候変動アクションプラン2050」は今年11月上旬に閣議決定される予定。同プランは法案ではないため議会での審議はないが、ドイツ政府にとっての政策骨子となる。
「気候変動アクションプラン2050」の今回の内容後退の背景には、環境省が明確に石炭利用の停止を追求したことに対し、経済政策を司る経済技術省や石炭生産地の州首相から猛烈な反発があったという。経済政策担当者は、石炭からの撤退がドイツ経済そのものの停滞や競争力の低下をもたらすとし、環境省が前回草案に盛り込んだ「2045年から2050年までに石炭使用を停止する」という文言の削除を要求していた。ドイツ経済界や石炭業界の労働組合も反発の声を上げていた。最終的に大臣間折衝が難航し、「気候変動アクションプラン2050」発行そのものが遅れそうになったことから、環境大臣が妥協し削除に応じた模様だ。メルケル首相も来年のG20議長国として環境政策を主要アジェンダに据えようとしていたが、足元の閣内不一致を前に環境政策の御旗を下げざるを得なかったようだ。
ドイツは2015年までに発電全体の30%を再生可能エネルギーで供給することに成功しているものの、排出量については5年前と比較して僅かに増加してしまっている。2020年までの温室効果ガス到達目標についても達成が厳しくなっている状況だ。
「気候変動アクションプラン2050」最終草案では、他にエコカーの推進についても内容を後退させた。前回草案では、2030年までに過半数を大きく上回る割合の自動車は電気自動車かバイオ燃料自動車に置き換えることを謳っていたが、今回の最終草案では「自動車からの温室効果ガス排出を大きく削減する」と述べるに留まった。
【参照ページ】Germany publishes 30-year climate change strategy
【文書】気候変動アクションプラン2050最終草案
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