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【国際】鉄鋼業界の気候変動対応は大きな遅れ、日系大手3社にも厳しい評価。CDP報告書

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 機関投資家らによる国際イニシアチブで、企業に気候変動の情報開示を求めるCDPは10月6日、気候変動を巡る環境変化が鉄鋼業界に与える影響を分析した新たな報告書「Nerves of Steel」を発表、鉄鋼メーカーは今後、炭素価格(カーボン・プライス)制度の導入と脱炭素技術の開発の遅れにより苦境に立たされるであろうとまとめた。

 同報告書は、時価総額総計1,210億米ドルを誇る世界の鉄鋼業界は、パリ協定の目標達成に向けて2050年までに製鉄1t当たりの二酸化炭素排出量を70%以上削減しなければならないと試算。ところが、低炭素技術の研究開発は初期段階から進展していないにもかかわらず、業界の利益率が低迷する中、研究開発費は近年14%も削減されているという。そのため、今日に至っても、排出量削減目標を達成するための商業ベースで利用可能な技術はいまだ現れていない。今後、世界の鉄鋼生産量のうち70%以上が2017年末までに各国で導入されていくと予想される炭素価格(カーボンプライシング)制度の影響を受けるとの見通しを示し、今後気候変動に絡む政策リスクへの対応は鉄鋼業界にとっての喫緊の課題となるだろうと分析した。

 報告書では、業界全体でこの10年間に排出量の改善とエネルギー効率の向上が進んでいないとも指摘。製鉄メーカー世界大手14社を分析したところ、鉄鋼業界は世界の排出量全体の6%から7%を占めているが、鉄鋼業界全体の排出量の40%を占める6社は、来年以降の排出量削減目標を発表していないという。

 報告書は、CDPが各企業から得たアンケート回答を基に、製鉄世界大手14社の気候変動対応ランキングも発表した。

  1. POSCO(韓国)
  2. SSAB(スウェーデン)
  3. ティッセンクルップ(ドイツ)
  4. 現代製鉄(韓国)
  5. アルセロール・ミタル(ルクセンブルグ)
  6. 新日鐡住金(日本)
  7. 中国製鉄(台湾)
  8. JFEホールディングス(日本)
  9. 神戸製鋼所(日本)
  10. JSWスチール(インド)
  11. エブラズ(英国)
  12. ナシオナル製鉄(ブラジル)
  13. タタ・スチール(インド)
  14. USスチール(米国)

 ランキングでは韓国企業の上位入りが目立つ。また中国は世界の鉄鋼生産量の50%を占めているが、炭素に関する情報公開を行っていない。ランキング評価では、「温室効果ガス排出量とエネルギーマネジメント」「排出量削減目標」「炭素価格変化がもたらす経営への影響度」「低炭素技術開発」「水資源に対する経営強靭度」「気候変動ガバナンス」の5つ柱だが、新日鐵住金、JFEホールディングス、神戸製鋼は「低炭素技術開発」ではいずれもBランクを取得。新日鉄住金はその他「温室効果ガス排出量とエネルギーマネジメント」「排出量削減目標」でもBを取得したが、それ以外はCまたはE評価。JFEホールディングス、神戸製鋼もその他の項目でC以下だった。一方、韓国のPOSCOや現代製鉄はそれぞれ3項目で最高位のAランクを取得した。また14社以外の製鉄世界大手である武漢鋼鉄(中国)、ニューコア(米国)、ノヴォリペツク製鉄(ロシア)、インド鉄鋼公社(インド)、包頭鋼鉄(中国)、セヴェルスターリ(ロシア)はCDPからのアンケートに回答をしなかったため、今回の調査やランキングから除外されている。

 同報告書によると、14社の製鉄所のうち20%は、2030年までに気候変動がもたらす海水位上昇リスクの高い地区に位置しており、さらに8%については海水位上昇リスクが極めて高いという。世界の鉄鋼業界は目下、中国からの鉄鋼過剰供給が世界全体の鉄鋼価格を下落させており深刻な問題となっている。その一方で、気候変動という足元の製鉄生産環境を及ぼす事業リスクや、炭素価格制度によりさらに利益率を押し下げる財務リスクも増してきている。気候変動は長期的な取組課題であるため、企業にも従来より長期を視野に入れた経営計画や目標設定、そしてその長期経営計画から派生する先行投資への英断が求められている。

【参照ページ】Press release: Steel Companies Need Tech Transformation As World Gets Tough On Emissions 
【レポート】Nerves of steel

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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