キリンホールディングスは3月28日、キリンビール取手工場とキリンビバレッジ湘南工場において、東京電力エナジーパートナーのグリーン電力メニュー「アクアプレミアム」を4月1日から導入すると発表した。アクアプレミアムは、東京電力エナジーパートナーが3月2日に発表した新たな電力供給サービスで、水力発電所で発電された電力のみを供給する。これにより、年間15,000t規模の二酸化炭素排出量削減効果が生まれる。
アクアプレミアムは、欧米で浸透しつつある「グリーン電力証書」に近い仕組み。グリーン電力証書とは、電力とは別に、水力を含む再生可能エネルギーで発電された電力であることを証明する証書を販売するサービス。通常発電された電力は、異なる電源のものが混在し、消費者に供給されているが、この証書を購入することで、形式的に再生可能エネルギーで発電された電力を購入しているということにできる。欧米では、このように発電事業者が「グリーン電力証書」を販売することから得られる収益を、再生可能エネルギー発電の活性化につなげていきたいと考えており、グリーン電力証書を異なる事業者に重複販売することなどを防ぐガイドラインなどが生まれている。東京電力のアクアプレミアムは、「グリーン電力証書」という名称では販売していないが、「二酸化炭素排出量ゼロの付加価値分の追加料金」を課しており、実質的に同じ。
アクアプレミアムは、4月1日から導入を開始しており、すでにキリンの他、三菱地所の新丸の内ビルディング、ソニー本社、ソニーシティ大崎が導入している。東京電力エナジーパートナーは、アクアプレミアム販売による追加売上について、「売り上げの一部を、設備改良による高効率化や水源涵養林の育成など水力電源の維持・拡大へ活用する」としており、売上の使途を完全には明確にしていない。
キリンホールディングスは、今回の施策の背景について、今年3月に「Science Based Targets(SBT)」から二酸化炭素排出量の長期削減目標の承認を受けており、その一環と説明。さらに今後、キリンビール神戸工場の化石燃料由来の熱消費量に相当する「グリーン熱証書」、シャトー・メルシャンの全電力使用量に相当する「グリーン電力証書」も購入する予定で、これによりさらに8,000t規模の二酸化炭素排出量削減効果があるとしている。
気候変動への関心が高まる中、企業には二酸化炭素排出量をさらに削減していくことが求められているが、「グリーン電力証書」や「グリーン熱証書」の購入はそのための手っ取り早い手段と言える。一方で、欧米先進企業では、「グリーン電力証書」や「グリーン熱証書」だけに頼らず、自前で再生可能エネルギー発電所を建設したり、再生可能エネルギー発電建設に出資したりすることが増えており、近い将来、日本企業にも同様の取組が期待されていくだろう。
【参照ページ】キリングループ2工場でCO2を排出しない水力発電による電力を使用
【参照ページ】法人のお客さま向け料金プラン「アクアプレミアム」の創設
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