英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省は8月28日、コーポレートガバナンスの改革案概要を発表した。英国全上場企業に対して、CEOと一般従業員の給与格差の公表を義務付ける点などが特徴。英国政府は、改革骨子の導入に向け、関連法案の改正、英国財務報告評議会(FRC)が定めているコーポレートガバナンス・コードの改訂、業界団体が作成している関連基準の改訂などを同時に進め、2018年6月の発効を目指す。
今回のコーポレートガバナンス改革は、昨年11月に英国政府が国会審議用に作成した政策提案書「グリーンペーパー(緑書)」を発表したことから始まった。グリーンペーパーには、役員報酬、流動しない固定株比率の高い企業のコーポレートガバナンス、従業員やサプライヤー等ステークホルダーの声を取締役会の意思決定に反映させるプロセスの3つが大きなポイントとして掲げられていた。
グリーンペーパーはすでに広くパブリックコメントを集めるプロセスを経ており、375の回答が寄せられた。パブリックコメントの内容は、英国下院のビジネス・エネルギー・産業戦略委員会の中で議論され、同委員会は今年4月にパブリックコメントを踏まえたコーポレートガバナンス改革提言書を発表している。今回ビジネス・エネルギー・産業戦略省の発表したファイルは、この下院の提言を受け、政府のコーポレートガバナンス改革の骨子を改めて固めたものという位置づけとなる。
今回の改革議論の中で、とりわけ焦点が当たっているのが役員報酬。社会格差は世界の深刻な社会問題の一つと認識されており、英国EU離脱や米トランプ政権誕生の背景にも広がる社会格差があると言われている。英国は2013年に役員報酬に関する規制を強化し、役員報酬は最低でも3年に一回株主総会で承認されることが義務化され、取締役一人ひとりの報酬開示も義務化された。しかし、それでも社会格差の問題は引き続き根強いとみて、グリーンペーパーでも、株主の権限をさらに強める方向性を示していた。そして今回、英国政府は新たに、全上場企業に対して、CEOと一般従業員の給与格差の公表を義務付け、さらに給与格差の是正に関する説明も義務化する法改正を行っていくと発表した。
固定株比率の高い企業のコーポレートガバナンス強化では、非上場企業を含めた大企業に対して、コーポレートガバナンスのための取組を開示する義務を課すことを決めた。これにより、企業が外部基準等に準拠した社外に説明のつくコーポレートガバナンスを行っていくかがチェックされるという。
また、ステークホルダーの意見を取締役会の意思決定に反映させることについては、一定規模以上の上場・非上場企業双方に対して、英国2006年会社法172条が定める従業員や他の関係者の意見を考慮する義務を取締役が遵守しているかについて説明を求めるという内容となった。
今後、改革案は国会での審議に入っていく。政府は必要があれば、再度パブリックコメントを募集することにも前向きな姿勢を示している。同時に、英国財務報告評議会(FRC)は今年後半にも、改革案を踏まえたコーポレートガバナンス・コードの改訂作業を開始する見込みだ。
【参照ページ】World-leading package of corporate governance reforms announced to increase boardroom accountability and enhance trust in business
【改革案】CORPORATE GOVERNANCE REFORM
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