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【日本】経済産業省、製品・サービスのCO2削減貢献量算出ガイドライン策定。普及は未知数

 経済産業省は3月30日、企業の製品・サービスによる二酸化炭素排出量削減への貢献量を算出するためのガイドライン「温室効果ガス削減貢献定量化ガイドライン」を策定した。今回のガイドラインは、企業に報告義務を課すものではないが、企業が削減貢献量を、サステナビリティ報告書や商品カタログ等のために算出・報告する際に参照するよう促している。

 二酸化炭素排出量削減はこれまで、企業の事業活動から生じる排出量に焦点が当たっており、製品・サービスによる排出量削減は比較的新しい分野。日本政府は、パリ協定で約束した自主削減目標の達成のため、「低炭素製品・サービス等による他部門での削減」と「海外での削減貢献」の2つを掲げている。しかし、製品・サービスによる削減と海外での削減の双方について、確立した定量化手法がないことを問題視。経済産業省は、2017年12月に「グローバル・バリューチェーン貢献研究会」を設立し、基本的な考え方をまとめたガイドラインに策定に着手していた。

 今回のガイドラインでは、削減量の基礎的な考え方として、対象製品・サービス等が普及しなかった場合に最も起こりうる仮想的なシナリオを「ベースライン・シナリオ」と定め、ベースライン・シナリオ下での排出量推計値からの削減量を「削減貢献量」と定めた。ベースラインには普及している既存の製品・サービスや法規制等で定めらた基準値、または業界平均値等が用いられる。また、排出量の推計や算出では、ISO14040やISO14064等により確立して「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の手法を踏襲。製品・サービスのライフサイクル(原材料調達から使用、廃棄まで)全体を算定範囲とすることを原則とした。

 具体的な算出では、「製品・サービス」を軸とし当該製品・サービスの商品寿命全体での排出量削減を算出する「フローベース」と、特定の「期間」を軸とし、当該期間に使用される製品・サービスでの排出削減量を算出する「ストックベース」の2つの考え方があるが、今回のガイドラインではどちらでも可能。但し、どちらを用いたかを明確に記載すべきとした。

 削減貢献量を算出する類似のものに、Jクレジット制度等に基づく「二酸化炭素クレジット(認証排出削減量)」があるが、今回のガイドラインは、削減貢献量をクレジット化することを目的とせず、純粋に算出・報告することに主眼を置いている。

 今回のガイドラインが普及するかは未知な点が多い。企業の製品・サービスによる二酸化炭素排出削減量の算出という視点そのものは、GHGプロトコルのスコープ3のうちカテゴリー11「販売された製品の使用」に該当し、算出自体は進むと可能性が高い。しかし、今回の研究会発足の背景ともつながるが、すでに世界的に各業界で独自のガイドラインが開発されており、WBCSDやISO等の国際イニシアチブもデファクトスタンダード獲得に向けた競争を繰り広げている。また、GHGプロトコルが発行している「企業のバリューチェーン(スコープ3)算定と報告の標準」では、自社の製品・サービスを使用した際の排出や削減という考えに立脚しており、「ベースライン・シナリオ」という概念がない。そのため、今回のガイドラインが、スコープ3との対応や関係性が示されていない点も気にかかる。経済産業省のガイドラインが企業の間で進むかは、今後経済産業省のガイドラインが国際的に認知されるか否かにかかっていると言っても過言ではない。

【参照ページ】「温室効果ガス削減貢献定量化ガイドライン」を策定しました
【ガイドライン】温室効果ガス削減貢献定量化ガイドライン

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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