国立環境研究所の長谷川知子研究員と京都大学の藤森真一郎准教授らが率いるチームは7月30日、気候変動対策のためセクターや地域を問わず世界一律の炭素税を導入した場合、気候変動による食糧生産量の減少影響よりも、二酸化炭素排出量削減による食糧生産量の減少影響の方が大きく、飢餓リスクを増大するとする論文を発表した。学術誌Natureに掲載した。同論文は、食糧安全保障のためには、経済合理性に基づく世界一律の対策だけでなく、多様な政策オプションを組み合わせるべきと提言した。
同チームは今回、国際的に使われている8つの世界農業経済モデルを用い、2050年までに気候変化と二酸化炭素排出量削減の双方による食糧安全保障への影響を分析した。その結果、一律の炭素税導入では、農業由来の炭素排出に課税させることによる食品の価格上昇、農地拡大に伴う土地利用変化による炭素排出に課税させることによる食品価格上昇、バイオ燃料需要増による食糧生産との競合等により、価格と量の両面から飢餓リスクが増すことがわかったという。地域別にみると、サブサハラアフリカ、南アジアで大きな負の影響が見られた。
同論文は、食糧安全保障の悪化のみを理由に二酸化炭素排出出削減が否定されるべきでないと強調。有効な解決手段として、炭素税を農業部門や低所得国に一律に課すような単純な政策をとらないこと、農業部門に炭素税収入を還元すること、飢餓リスクの高い地域への栄養援助を行うこと等を挙げた。
【参照ページ】温室効果ガス排出削減策が食料安全保障に及ぼす影響の評価
【論文】Risk of increased food insecurity under stringent global climate change mitigation policy
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