衆議院は12月6日、水道施設に運営権を民間事業者に設定できる方式「コンセッション方式」の解禁や、都道府県に対し水道事業運営の広域連携推進を努力義務化する改正水道法を可決し、同法が成立した。参議院は12月5日に可決した。水道法の目的を「水道の計画的な整備」から「水道の基盤の強化」に変更するとともに、国、都道府県、市町村、水道事業者等に対し、「水道の基盤の強化」に関する責務を規定した。
同法案提出においては、理由として、「人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化等に対応」と説明している。厚生労働省によると、今後人口減少に伴い、水道料金収入の基礎となる水需要は約40年後には約4割減少していく。一方、水道事業は現在市町村経営が原則となっているが、約3割の水道事業体が赤字となっていることもあり、水道設備の老朽化は進行。すべての管路を更新するには130年以上かかる想定で、耐震適合率は37.2%にとどまっているため、大規模災害時には断水が長期化するリスクを負っているという。団塊の世代の退職による職員数の減少という課題も上げている。
これら経営難状態の水道事業に関し、同法の柱は2つ。まず、各市町村の単独経営だった水道事業を、都道府県のリーダーシップのもとに他の自治体と共同運営を行う広域連携の推進。これまでも広域連携検討は各市町村によって自主的に検討されてきたが、改正水道法では都道府県に推進努力義務を課した。
もう一つが、コンセッション方式の解禁。民間事業者の経営ノウハウを活用し、コスト効率の良い水道事業を実現しようというもの。民間事業者の活用については、これまでも水道事業運営の一部を外部委託する「個別・包括委託方式」、設計・建設・運営を民間委託する「DBO方式」、DBO方式に加え資金調達も委託する「PFI方式」の導入が進んでおり、PFI方式は浄水場排水処理施設の建設・運営ですでに採用されている。それに比べ、今回解禁となったコンセッション方式は、水道施設の所有権を公共が有しつつも、運営を民間事業者に委託する長期事業契約を締結するというもの。
改正水道法で認められるコンセッション方式では、水道事業の全体方針の決定及び全体管理についてはコンセッション事業者に委託はできない。新設工事、全面除却を伴う再整備も委託できない。一方、それ以外の水道事業の運営、施設更新、大規模災害時の対応等が委託できる。コンセッション事業者は、施設を保有する市町村等から施設を借り受け、水道事業を実施する。
コンセッション方式については、海外では「水道料金が高騰した」との指摘も多く、反対も根強い。公共事業の中でも、衛生面等で命に直結しやすい「上水道」については、公営を鉄足するという国や地域も多い。
【参照ページ】法案
【参照ページ】水道法改正に向けて~水道行政の現状と今後のあり方~
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