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【国際】スマホで読取り可能な安価な食品鮮度センサー開発。消費期限表示に替わる可能性も

 インペリアル・カレッジ・ロンドン工学部生体工学科のフィラット・グダー研究者らのチームは6月5日、消費期限表示の概念を変えうる新たな肉・魚製品向けセンサーを開発したと発表した。非常に安価なデバイスで、包装したままの製品の安全性をスマートフォンで確認できる。将来的には食品販売業者や消費者が手軽に活用できると期待されている。

 英国の消費者の3人に1人は、消費期限に達したという理由だけで年間125億ポンド(約1.7兆円)分の食品を廃棄している。しかしそのうちの60%(420万t)は可食の食品ロスとなっている。

 今回発表のデバイスは、「紙ベースの電気ガスセンサー(PEGS)」と呼ばれ、肉・魚製品中のアンモニアやトリメチルアミンのような腐敗ガスを検出することができる。試作品では、市販されている紙と炭素インクのボールペンを利用し、わずか2セントのコストで完成。研究者たちは、紙と炭素インクのボールペンが生分解性を持ち、環境に優しく、無毒であり、食品の包装に安全に使用できることにも着目した。

 切断したPEGSをカードエッジコネクタの内部に取り付け、スマートフォンに搭載されている近距離無線通信(NFC)機能で読み取れるようにした。実験室で、包装された魚肉と鶏肉への感度をテストしたところ、既存のセンサーよりも腐敗ガスを素早く正確に感知したという。しかも既存のセンサーのほとんどは湿度が90%を超えると感度が落ちるが、PEGSは湿度100%近くでも問題なく機能する。エネルギー消費量も非常に少なく、食品の腐敗ガスにのみ反応するという。

 研究者たちは、将来的にはスクリーン印刷やロールツーロール印刷などの既存の大量印刷とロポカッターを使用することで簡単にスケールアップし、PEGSが最終的に消費期限・賞味期限ラベルに置き換わる可能性があると述べている。この方法により、現在の検査方法より大幅にコストダウンできるため、製品コストが下がり、その分を消費者に還元できるのではないかとも述べている。実際に普及させるには、あと数年かかりそうだが、画期的な食品鮮度センサーとなりそうだ。

 農水省・厚労省が作製した食品の期限表示についてのガイドラインによると、消費期限(Use-by date)は腐敗しやすいものに適用され、安全性に重点が置かれている。一方、賞味期限(Best before)は比較的長期保存が可能なものに適用され、品質や美味しさの保持に重点が置かれている。

 一般的にそれらの期限は、「粘度」、「濁度」、「比重」、「過酸化物価」、「酸価」等を評価する理化学試験と、「一般生菌数」、「大腸菌群数」、「大腸菌数」、「低温細菌残存の有無」等を評価する微生物試験、そして一定の条件下での人間の視覚、味覚、嗅覚による判定である官能検査を基にしているという。

 しかし食品の鮮度は、加工プロセスや保存状態の影響も極めて大きい。肉類・魚類に関して、一般的に消費者は消費期限を目安にしているが、不安があるときにスマホで鮮度を確認できるのは非常に便利であり、廃棄物やプラスチックの大幅削減にも繋がる。

 研究者たちは、まだ課題はあるものの、食品分野でのPEGSの活用・普及に加え、農業における化学物質や大気質の感知、腎臓病等に関連する呼気中のバイオマーカーの検出など、食品以外の用途にも幅広く使えることを目指しているという。

【参照ページ】Food freshness sensors could replace ‘use-by’ dates to cut food waste
https://phys.org/news/2019-06-food-freshness-sensors-use-by-dates.html
【参照ページ】消費者庁:食品期限表示の設定のためのガイドライン
【参照ページ】農林水産省・厚生労働省:食品の期限表示について

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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