国際労働機関(ILO)は7月1日、気候変動による気温上昇で、2030年には労働力8,000万人分以上に相当する労働生産性低下が発生する見込みと発表した。今回の試算は、現時点で最も高い国際目標である2100年までに気温上昇を1.5℃未満に抑える目標を想定してのもの。パリ協定時点の2℃目標や、現行水準の3℃から5℃上昇となると、それよりはるかに高い労働生産性低下が予想される。
気温上昇で最も生産性が下がるのが農業と建設業。それ以外の業種でも労働環境が悪化し、ディーセント・ワークが損なわれる。昨今では35℃以上の蒸し暑い状態が世界各地で発生するようになってきた。2019年には、6月26日にフランス中部のクレルモン=フェランで41℃を記録。ドイツやポーランド、チェコでも最高気温が38℃を突破。6月の観測史上最高を記録した。仏パリでも35℃を超えた。6月27日には、スペインのカタルーニャ地方で、40℃を超え、巨大な山火事が発生。さらに6月28日には、フランス南部のモンペリエで気温が46℃を超え、特産品であるワインぶどう園が熱波により焼け焦げる事態が発生した。コペルニクス気候変動サービスによると、2019年6月に世界は観測史上最高の暑さで、特に欧州では異常な暑さを記録したという。
今回のILOの報告では、2030年には熱ストレスにより世界の農業人口9.4億人の労働量のうち60%が失われると予測。建設業では19%が失われると試算した。他にも労働力喪失リスクが高いのは、環境サービス、ごみ収集、救急・消防、修理、輸送、観光、スポーツ等。地域別では、南アジアと西アフリカでの喪失が大きいとした。また、低所得国ほど被害額が膨らむとした。
気候変動は、雇用問題にまで発展してきた。ILOは今後も気候変動が与える労働影響について注視していく。
【参照ページ】Increase in climate change-related heat stress predicted to bring productivity loss equivalent to 80 million jobs
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