国際環境NGOのFriends of the Earth(FoE)Japan、プランテーション・ウォッチ、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)等は7月30日、旅行大手エイチ・アイ・エス(H.I.S.)に対し、同社が宮城県角田市で建設中のパーム油を燃料としたバイオマス発電所事業から撤退するよう求める署名148,588筆を提出。記者会見を行った。今回の署名には、日本だけでなく、米国、英国、ドイツ、インドネシア、マレーシア等65か国から署名が集まった。H.I.S.は、署名の直接受け取りと、意見交換要請を拒否したため、署名は同社に郵送された。
森林破壊の大きな原因となっているパーム油そのものを燃料とするバイオマス発電は、世界的に「再生可能エネルギー」とは認められない方向性が生まれてきている。EUでも、パーム油バイオマス発電については、森林破壊に関与していないことを示すRSPO等の認証を取得することが義務付けられた。日本でも、経済産業省委託の調査でも、森林減少や泥炭地開発などによる二酸化炭素排出を除いても、栽培・加工・輸送にかかるパーム油による発電の二酸化炭素排出量は液化天然ガス(LNG)に匹敵するとしている。
【参考】【EU】欧州委、再エネ指令に基づくバイオマス燃料認定基準を最終決定。森林破壊を伴うもの排除(2019年3月18日)
バイオマス発電に対しては、FoE Japan及び、環境エネルギー政策研究所(ISEP)、気候ネットワーク、地球・人間環境フォーラム、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)等が、「ライフサイクルでのGHG排出 LNG火力発電の50%未満」を要件にするよう求めた共同提言を発表。この中でも、森林破壊の原因となっているパーム油と大豆油、食糧と競合しやすい植物油を燃料とするバイオマス発電は禁止するよう求めている。同提言では、他にも、生物多様性、人権侵害等についても言及している。
同発電所は、東芝プラントシステムが2018年9月6日、H.I.S. SUPER電力から受注。発電電力は固定価格買取制度(FIT)を利用して全量を東北電力に売電される。売電単価は1kWhあたり24円。同発電所に対しては、FoE Japan等は計画発表当初から、反対活動を展開してきたが、H.I.S.は中止要請には応じない構え。一方、H.I.S.SUPER電力は、2019年3月22日にRSPO正会員になり、RSPO認証基準のパーム油を活用する考えを公表している。但し、RSPO基準そのものについても、RSPO認証を取得しているパーム油で、基準を満たしていない事象も複数発生しており、H.I.S.には、RSPO認証パーム油取得後も、サプライチェーンの厳しい管理が要求されることになる。
【参照ページ】エイチ・アイ・エス(H.I.S.)に14万8千筆の署名提出~「熱帯林こわすパーム油発電やめて!」
【参照ページ】環境団体、バイオマス発電に関する共同提言を発表~「ライフサイクルでのGHG排出 LNG火力発電の50%未満」を要件に
【参照ページ】H.I.S.エネルギーホールディングス
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