経済産業省の総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会は12月11日、「新・国際資源戦略」策定に向けた提言を採択した。同提言は、7月31日に発表された同分科会の報告書の中で、資源外交のあり方や新興国の取り込みの方策、石油備蓄を核とした緊急時の供給体制等について国際資源戦略を策定すべきとされたことに基づくもの。石油・天然ガス小委員会及び鉱業小委員会の合同会合を2回開催。今回、同分科会としての考えを公式にまとめた。
今回の提言では、「強調し過ぎることはないほど、気候変動問題への対応が叫ばれ」ていると、気候変動にも言及した。しかし、そのために政府のエネルギー政策としては、「高効率な火力発電の国際展開を促進」し、将来的には炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)技術を組み合わせたゼロエミッション型化石燃料に向けたイノベーションを推進していくことを柱とした。文書の中では明言されていないが、「高効率な火力発電」とは、政府が以前から推進している高効率石炭火力発電を指しているとみられる。
そのロジックとしては、「アジア・アフリカを中心に今後も化石燃料を利用する状況は継続される見通し」と、再生可能エネルギーへのシフトは全面的には起こらないと判断。「省エネルギーや再生可能エネルギーの普及によるCO2排出削減に加え、CO2を有効利用していくカーボンリサイクルのアプローチを世界全体で進めていくことが必要である」とし、あくまで化石燃料をエネルギー源としていく立場を明確にした。
また、気候変動対策では、アンモニアを燃料とする火力発電の可能性も言及。「燃料アンモニアは、再生可能エネルギーや原油増進回収法(EOR)技術を利用して製造される場合はカーボンフリーとなる」とし、削減効果があるとした。但し、当面の可能性としては、「燃料アンモニアの石炭火力混焼を含めて、諸外国の再生可能エネルギーを我が国の資源として捉えて輸入する」構想を例示し、日本国内で再生可能エネルギーを使ってアンモニアを製造するのではなく、外国から輸入し、日本では石炭火力発電所で混焼させる案を記載した。
他方、バッテリー等に使われるレアメタルでは、「コバルト鉱石生産の約6割はコンゴ民主主義共和国に偏在していることに加え、中流の製錬工程については中国が製錬能力の約6割を占める」「他鉱種でも、タングステン鉱石は9割以上、蛍石鉱石は6割以上が中国で生産」「銅についても、最大の地金生産国である中国が質的・量的に生産能力を増強させている状況に加え、日本への鉱石の最大供給国」と指摘し、中国リスクを意識。資源確保策や備蓄政策が必要とした。
地政学的には、中東情勢が不安定化し、日本のプレゼンスが低下していること、さらには液化天然ガス(LNG)は備蓄が困難なことを踏まえ、中東以外からのLNG輸入の増加、中東からの原油供給の安定化、原油備蓄の増強等を挙げた。
翌12月13日には、電気事業連合会の勝野哲会長が、定例記者会見の中で、「(石炭火力発電を、現行の二酸化炭素排出削減目標の期限に当たる)2030年までは活用しないといけない」と述べ、石炭火力発電を最低10年間は重要な電源として継続していく考えを示した。
【参照ページ】第28回 総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会
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