国際決済銀行(BIS)は1月20日、気候変動による金融危機に備えた政策展開の必要性を提唱するレポート「Green Swan」を発表した。金融業界では、起こる可能性が限りなく小さいが起きたときに壊滅的な損害を与える事象のことを「ブラック・スワン」と呼ぶが、気候変動という環境リスクになぞらえ「グリーン・スワン」という名称を付けた。
BISは、気候変動が新たな金融課題となっていることを認識した上で、金融政策の中に気候変動を組み込んでいくことの難しさを指摘。気候変動がもたらす影響には不確かなものが多く、物理的リスクや社会・経済への影響の面で、先々の予測が難しいことを理由に挙げた。一方で、実影響が出た場合の程度は甚大になる可能性があるため、政府、企業、NGO、国際機関等が十分に連携し事前の対策を進めることの必要性を主張。特に、各中央銀行が中心的な役割を担うべきだとした。気候変動に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(Network for Greening the Financial System;NGFS)」の活動にも触れた。
【参考】【国際】中銀・金融当局連合NGFS、中央銀行のESG投資ガイダンス発行。気候変動は金融リスクの発生源(2019年10月20日)
但しBISは、グリーン・スワンが、従来のブラック・スワンとは異なる点として3つを挙げた。まず、ブラック・スワンとは異なり、気候変動による経済的ダメージはすでに予見されているということ。次に、グリーン・スワンは、単なる金融危機にとどまらず、人間社会に大きなダメージとなること。そして、ブラック・スワンに比べ、非常に複雑なメカニズムで発生すること。
この新たな危機に対応するためには、金融セクターにとって一般的なリスク算定手法であった過去リスクデータの算出は適切ではなく、未来の変化を想定した新たなリスク認識手法が必要となることを強調した。シナリオ分析については、部分的な解決策にすぎないとし、また中央銀行のアクションだけではリスクマネジメントできないことから、中央銀行が政府や金融機関等に積極的に働きかけ、調整役的なリーダーシップが求められるとした。
【参照ページ】The green swan
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