EUや中国等の世界貿易機関(WTO)加盟14カ国は、貿易紛争を解決するため暫定的な枠組みに合意した。WTOは、米国政府の妨害により、世界貿易機関(WTO)の紛争解決機関である上級委員会が開催できない状態が続いている。
米国は2年以上にわたり、WTO上級委員会の後任の選定を一貫して拒否。その結果、7人いる上級委員会委員が任期満了や自主的退任により3人にまで減少していた。WTO上級委員会は3人の委員が判事となり係争を扱うため、3人を下回ると上級委員会を開くことができなくなる。そして2019年12月10日に、ついに2人が任期満了で退任し、残りは1人に。結果、第一審に当たる紛争処理小委員会は続投するものの、上訴審に当たる上級委員会が開催できなくなり、事実的にWTOの紛争解決メカニズムは機能停止に陥った。
(出所)JETRO
米国政府は、米国に対して否を示す判決を下しうるWTOに対して批判的な態度を取ることが多い。新委員選任の反対についても、上訴審での審議が遅いことや、紛争解決と関係ない勧告的意見を出す権限があることを理由に、WTO改革を迫っていた。
2019年1月からは、機能停止を避けるためのWTO一般理事会非公式プロセスが開始され、日本政府もオーストラリア及びチリと共同で改革案を提出し、上級委員会の審査範囲,審査期限の遵守,判断の先例的価値等の改革案を示していたが、12月9日から11日までに開催された一般理事会で合意に達することはできなかった。
今回EU等が合意した暫定枠組みは、今後3ヶ月間で調停委員10人を選出し、そのうち3人が上訴案件を審議するというもの。合意文書に署名したのは、EU、ノルウェー、カナダ、オーストラリア、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、香港、メキシコ、ニュージーランド、シンガポール、スイス、ウルグアイ。WTOの正規の枠組みから離れ、合意国間で個別に紛争解決機関を設置する形となった。
【参照ページ】WTO上級委員会の機能停止とWTO改革について
【参照ページ】WTOの上級委員会、委員が1人となり実質的に機能停止
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら